ビアテスター・マスターエバリュエイターの講習会(2002/2/9〜10)受講記録(4)

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シピ作成について。

  • 初期比重(OG)を設定する。
    • アルコール度数6%のビールを造りたいとする。
    • 比重低下値を求める。
      • 比重低下値=アルコール度数÷0.131(公式)
      • 比重低下値=6÷0.131=45.8
    • 使用する酵母の発酵度(AA%)を調べる。(発酵度(AA%)は用語集参考)
      • 酵母により異なるが60から80%、平均75%である。
    • 比重低下値と酵母の発酵度(AA%)より、初期比重のグラビティユニット(GU)を求める。
      • グラビティユニット(GU)=比重低下値÷酵母の発酵度(AA%)
      • 発酵度(AA%)=75 %とする。
      • グラビティユニット(GU)=45.8 ÷ 75% =61.1
    • 初期比重(OG)=グラビティユニット(GU)+1000
      • 初期比重(OG)=61.1 + 1000=1061.1
    • 最終比重(FG)=初期比重(OG)ー比重低下値
      • 最終比重(FG)=1061.1 - 45.8 =1015.3
    • と計算する。
  • 麦芽量の計算する。
    • 仕込むビールの総リッター度(LDR)を計算する。
      • 総リッター度(LDR)とはliter digree required の略
      • 総リッター度(LDR)とは、たとえば、初期比重(OG)が1061.1の麦汁を1001まで水で薄めたとすると、その結果できあがる麦汁の量を意味する。
      • たとえば、初期比重1061.1の麦汁の場合、比重を1001 になるまで、水を加えると総量は61100リットルになる。
      • これを、61100LDRと表す。
      • 総リッター度が仕込みの基本となる。
      • この場合、損失量を無視している。
      • 実際は、損失量があるので、その分上乗せして考えないといけない。
      • 総リッター度(LDR)={仕込み量(リットル)+損失量(%)}×グラビティユニット(GU)
      • 仕込量1000リットル、損失量6%、グラビティユニット(GU)=61.1の場合、
        • 総リッター度(LDR)=(1000+6)×61.1=64766LDRとなる。
    • 麦芽のキログラム・リッター度(L@Kg、またはL/Kg)を調べる。
      • 麦芽1Kgから採れる比重1001の麦汁の量(リットル)である。
      • 麦芽のキログラム・リッター度(L@KgまたはL/Kg)は麦芽によって異なる。
        • 麦芽の種類、メーカーによって異なる。
        • 麦芽を購入した際、麦芽分析表を必ずもらうこと。
        • 麦芽分析表に記載されている。
        • 購入した麦芽(ピルスナーモルト------270 L/Kg)と書いてあれば、
        • ピルスナーモルト1Kgを使うと、比重1001の麦汁が270リットル出きると言うことを意味する。
      • 麦芽分析表に記載されている麦芽のキログラム・リッター度(L@KgまたはL/Kg)は、微細した麦芽での量。
        • 微細した麦芽は、粉砕(破砕)麦芽より糖分抽出量が高い。
        • 実際、ビール工場(またはhomebrew)で仕込む際の麦芽のキログラム・リッター度は、分析表の75%±3%と考える。
        • 購入した麦芽(ピルスナーモルト------270 L/Kg)と書いてあれば、270×0.75=202.5(L/Kg)となる。
        • 75%±3%という数値は、ビール会社の設備などによって異なる。
          • 最終的には、経験値でしかつかめない。
    • 総リッター度(LDR)と麦芽のキログラム・リッター度(L@Kg、またはL/Kg)から、必要な麦芽の量を計算する。
      • 麦芽重量(Kg)=総リッター度(LDR)÷キログラム・リッター度(L@Kg、またはL/Kg)
      • たとえば、分析表の麦芽のキログラム・リッター度が270(L@KgまたはL/Kg)のピルスナーモルトを使って、アルコール容量濃度 6.0%のビールを1000リットル仕込みたい時、必要な麦芽の量は?(ただし、酵母の発酵度を標準の75%とする。)
        • 酵母の発酵度(AA%)が75%とすると、初期比重は1061.1。
        • すなわち、グラビティユニット(GU)=61.1。
        • 総リッター度(LDR)=(1000+6)×61.1=64766LDRとなる。(損失量6%とする。)
        • 分析表のピルスナーモルトのキログラム・リッター度が270(L@KgまたはL/Kg)より、270×0.75=202.5(L/Kg)。
        • 麦芽重量(Kg)=64766LDR÷202.5(L/Kg)=319.8Kgとなる。
      • 数種類の麦芽を組み合わせて、アルコール容量濃度 6.0%のビールを1000リットル仕込む場合。
        • 270L/Kgのpale ale maltを95%、250L/Kgのクリスタルモルトを5%使用して仕込む時、
        • pale ale malt:270×0.75=202.5(L/Kg)
          • {64766LDR÷202.5(L/Kg)}×0.95=303.8Kg
        • クリスタルモルト:250×0.75=187.5(L/Kg)
          • {64766LDR÷187.5(L/Kg)}}×0.05=17.27Kg
        • 麦芽総量=321Kgとなる。
  • ビールの色度数が幾らになるかを検証する。
    • 試験的に仕込んだビールの色度数をスケール表で見て10SRMになったとする。
      • これでよいかどうかを判断する。
      • すなわち、ビールの色(初めの計画)を取るか、フレーバーを取るか、を判断する。
      • 自分の造りたいビールに比べて色が濃いときは、クリスタルモルトの配分割合を変える。
      • その時はフレーバーが変わる。
      • 麦芽の配分は、フレーバー主体で配分を決めたので。
      • 仕込みをするときは何回もシュミレーションする。
    • ビールの色に関しては、
      • 糖化の時にうっすらと色が付く。
      • 煮沸の時にも色が付く。
        • 煮沸時間、煮沸釜の構造による。
        • スティーム式は色が付きにくい。
      • 麦芽が古いか、新しいか。
        • 古い麦芽は色が濃くなる。
      • 仕込み水のミネラル含有量。
        • 硫酸塩の多い水は、ビールの色は薄くなる。
        • 炭酸塩の多い水は。ビールの色は濃くなる。
      • などにより影響を受ける。
    • 麦芽の色度数を元に、ビールの色度数を計算する方法。
      • A麦芽:200Kg    6EBC =1200EBC
      • B麦芽: 50Kg  150EBC =7500EBC
      • C麦芽:  2Kg 1500EBC =3000EBC
      • 合計  252Kg      =11700EBC
      • 111700/252=46.4EBC
      • 煮沸により倍になる。92.8 EBC
      • SRM=(EBC+1.2)÷2.6=36.2
      • (テキストにはもっと複雑な計算式が書いてあった。)
  • ホップ投入量の計算
    • IBU 30 のビールを造りたいとき、ホップを何Kg入れればよいか?
      • 英国ビールを造るときは、英国品種のホップを使う。
      • ドイツビールを造るときは、ドイツ産のホップを使う。
      • まず、使いたいホップのα酸値を調べる。購入時にα酸のデーターをもらう。
      • α酸 4%と書いてあったとする。
        • ホップの重量の4%がα酸であるという意味。
        • すなわち、ホップ1g中に0.04gのα酸が存在することを意味する。
      • α酸 4% がすべてビールの中に溶け込まない。
      • そのうち数%しか、溶け込まない。
      • α酸抽出率%とは、α酸の中でビールに溶け込む割合を意味する。
        • α酸抽出率%は非常に変動しやすい。
          • 煮沸時間が長くなれば、α酸抽出率%は上がる。
          • 麦汁の比重が上がれば、α酸抽出率%は下がる。
        • α酸抽出率%はpellet とwholeとで異なる。
        • α酸抽出率%を上げるには、煮沸時間を長くする。
          • しかし、煮沸時間が長くなれば、タンニンなどのオフフレーバーが付き、麦汁は劣化する。
          • 煮沸時間は60から90分まで。
    • 計算式
      • Hop量(g)={IBU÷(1×α酸値×α酸抽出率%×1000)}×仕込量(リットル)
      • α酸値が4%で、α酸抽出率%が29.5%の時、IBU 30 のビールを仕込みには、
        • 1(ホップ1グラムの意味)×α酸値×α酸抽出率%=1×0.04×0.295=0.0118(グラム)のイソα酸値が麦汁に解ける。
        • IBUの単位はmg。
        • グラムをmgに変換するための1000倍する。
        • ホップ1グラムより11.8mgのα酸がイソα酸となり麦汁に解ける。
        • IBU 30とは、ビール1リットル中にイソα酸値が30mg含まれていることを意味する。
        • 30(mg/リットル)÷11.8(mg/g)=2.6 g/リットル(ビール1リットルあたり2.6gのホップが必要。)
        • 仕込量か1000リットルの時、2.6×1000=2.6Kgのホップが必要。
        • 仕込量か20リットルの時、2.6×20=52gのホップが必要。
      • whole hopsとpellet hopsのそれぞれのホップα-酸抽出率チャートをUPしました。
    • α酸が高値の時、使用するホップ量が減少する。
      • α酸の高いホップを使うとホップ代が安くなる。
      • しかし、α酸の高いホップを使うとメタリック臭が付きやすい。
        • アドミラブル---α酸 14%
        • ヘラルド------α酸 12%
        • コフサム------α酸 13%
        • を使い、40 IBU 以上の苦みをつけると間違いなくメタリック臭がつく。
    • 美味しいビールを作るには、Hopsを構成する3つの要素の1つを重点的に抽出するようにする。
      • α酸は、フムロン、コフムロン、アドフムロンに分かれる。
      • 3つは苦みの質が異なる。
      • 良い苦みはクリーンでさわやかな苦み
      • 悪い苦みは荒々しく不快な苦み。
      • 良い苦みのビールを作るには、フムロンを出きる限り抽出するようにする。
      • ホップのデーター表をみて、コフムロンの含有量の低いホップを使う。
      • コフムロンは非常に荒々しく、いやな苦みである。
      • 1.6%以下のこコフムロン含有量のホップを使うとよい。
      • 参考表
      • コフムロンの抽出量は麦汁のpHに依存する。
        • 麦汁のpHが高いときは、コフムロンの抽出量は促進される。
        • pHは5.0〜5.3が理想値。
        • 麦汁のpHが5.4 以上の時は、コフムロン、アドフムロンが多く抽出される。
        • 糖化中は、糖化液のpHが5.0〜5.3 にしないといけない。
        • 仕込み水のpHの低いものを使わないといけない。
    • アロマホップについて。
      • アロマレベルを自分で決める。
        • 目標をするアロマレベル(レベル1から5まである)に応じて、アロマホップを入れる。
      • 煮沸終了の10分前以降に入れる。
        • 10分前から0分、または火を消して5分後に入れたりする。
      • アロマ成分はミルセン、フムレン、ファルネセン、カリオフレンの4種類ある。
        • 非常に揮発しやすく、投入はなるべく遅いほうがよい。
        • アロマのパワーを付けるには、出きる限り遅く入れる。
        • フムレン、ミルセンは熱により酸化しやすい。
        • ビール中に溶け込んでいるアロマ成分は酸化したアロマ成分である。
        • ホップのアロマとビール中のホップのアロマとは違う。
        • 酸化することによって、ホップのアロマが非常に良いものに変わる。
        • アロマのパワーは弱くなるが、香りそのものはよいものに変わる。
        • ドイツの古い職人は、古いホップをアロマホップとして使う。
        • 10分前にアロマホップを入れるとアロマのレベルは低くなるが、アロマの質はよくなる。
        • アロマの質を重視するときは、火を止めるときに、アロマホップを入れる。
    • バライタルビール(?)
      • 1種類のホップで香り、苦みを付けたビール。
      • ハッキリとしたアロマのビールになるが、いくぶん単純さがある。
      • ボヘミアンピルスナーはザーツ1種類を使う。
    • ドイツの伝統的なビール造りにおけるホップの投入方法。
      • 60分間煮るホップ、30分間煮るホップ、と2段階に分けて入れる。
      • α酸のイソ化は100℃で行われる。
    • ドライホッピングについて。
      • 酸化していないホップの生の香りをビールに付けることが出きる。
      • ドライポッピングのアロマはかなり長持ちする。
      • 煮沸したホップのアロマはボトリングの後1ヶ月後には殆ど消える。
      • ドライホッピングは香りのパワーが強い、特徴のあるアロマをつけることが出きる。
      • 発酵を終えて、酵母を抜き取った後、ビールに入れるとよい。
      • しかし、時期にはこだわらなくてもよい。
    • ドライホッピングで、つけておく期間について。
      • 時間が長いほど、香りがよく出る。
      • 長いと、ホップのオフフレーバーが出てくる。
        • 特に、フェノールとかα酸とか。
      • エールはラガーより長くつける。
        • 英国エール---4週間、1.5〜3Kg/ビール1000リットル
        • ドイツラガー------3週間、0.75〜1.5Kg/ビール1000リットル
        • 少なくとも、1週間はつけなくてはならない。
        • 発酵を終えて、酵母を抜き取った後、ビールに入れる。
      • ドイツ人はきれい好き。
        • 最近はドイツビールでもドライホッピングをするようになった。
        • とくに、ドイツのマイクロブルーワリィで見られる。
    • ドライホッピングにおける細菌感染について。
      • ホップには必ずバクテリアがついている。
      • しかし、ドライホッピングの後、30分以内に死滅する。
        • pHが低い、アルコールが出来ているので。
        • 多くのバクテリアは1.5%以上のアルコールには弱い。
        • 例外、ペジオコッカス、ラクトバシルス
          • ペジオコッカス、ラクトバシルスは酸、アルコールに抵抗性を示す。
          • しかし、ペジオコッカス、ラクトバシルスはホップのα酸に弱く、ホップには付いていない。
      • α酸が酸化したものは、バクテリアがつきやすくなる。
        • 古いホップは使わない方がよい。
  • 酵母の選択と投入量の計算
    • 酵母の選択
      • 酵母の発酵度とビールのボディとの関係
        • 発酵度80%以上の酵母----ライトボディ
        • 発酵度75〜80%の酵母----ミディアムボディ
        • 発酵度70〜75%の酵母----フルボディ
        • ボディをどうするかで酵母を選択するのも一つの方法
      • 英国系エール酵母---------風味豊かな味わい深いビール
      • ドイツ系エール酵母-------風味豊かでスッキリとした味わいのビール
      • ラガー酵母--------------風味がシンプルでスッキリとした味わいのビール
      • ヴァイツェン酵母--------フェノーリックなフレーバーが出る。
    • 酵母の投入量
      • 酵母の投入量では厳密な計算をしなくてもよい。
      • 健康な酵母を使用するようにする。
      • 麦汁の比重に応じた量の酵母を投入する。
        • だいたいの話だが、エール1000リットルで500gの酵母を投入する。
        • 麦汁の比重が高くなると、酵母にストレスがかかり、マルトースやマルトトリオースの吸収能力が低下する。
        • 麦汁の比重が高いときは、酵母の投入量を増やさないといけない。
    • 酵母が正常に活動できる条件(酵母量の観点から)
      • 比重1004の麦汁1mlにつき、100万個の酵母がいる。
        • 比重1004と糖度1プラートとは同じこと。
      • アルコール濃度5%のビールを作るとする。
        • 使用する酵母の発酵度を75%とすると、麦汁の初期比重は1051でないといけない。
        • その時、麦汁1リットルにつき(51÷4)×100万個×1000ml=127.5億個の酵母が必要。
        • ドライ酵母1gには、200億個の酵母が存在する。
        • よって、麦汁1リットルにつき127.5÷200=0.635gのドライ酵母が必要。
        • 麦汁1000リットルでは635gのドライ酵母が必要。
        • しかし、ドライ酵母は1袋500グラムなので、厳密に635グラム使う必要が無い。
        • 一袋(500グラム)で十分。
        • 二袋を使うことは、経営上もったいないので。
      • 回収酵母を使用するときは、
        • 酵母は発酵タンクの底に沈んでいる。
        • だいたいの目安として、1mlにつき15億個の酵母が存在する。
        • 上記の初期比重1051の麦汁1リットルでは、127.5÷15=8.5mlの回収酵母が必要。
        • 仕込量が1000リットルでは、8.5リットルの回収酵母は必要になる。
    • ラガー酵母(下面発酵酵母)を使用するときの考え方。
      • すこし、複雑である。
      • 酵母そのものは低温には弱い。
      • ラガー酵母はエール酵母より悪い条件で働いていることを理解する。
      • 発酵温度で酵母量は異なる。
      • 酵母投入時に酵母が環境の変化でショック死する。
      • 麦汁温度(発酵温度)が高いときは酵母量は少なくてよい。
      • 麦汁温度(発酵温度)が低いときは酵母量を多くしないといけない。
      • 酵母の活動から見た場合、ラガーの発酵温度は9〜12℃が理想的。
      • ラガービールの特性から見た場合、麦汁温度(発酵温度)がより低いほどラガーらしい特性が出る。
      • 酵母の活動から見た場合、麦汁温度(発酵温度)が低いと酵母の活動は低下する。
      • その妥協点を見つけることになる。
      • 酵母量は
        • フレーバーを重要視するときは、麦汁温度(発酵温度)を7℃、300万個/mlの酵母が必要。
        • 経済効率を重視するときは、麦汁温度(発酵温度)を15℃、80万個.mlの酵母が必要。
      • 計算式について、
        • 7℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁の糖度(P)×0.3×麦汁量(リットル)
        • 9℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁の糖度(P)×0.2×麦汁量(リットル)
        • 12℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁の糖度(P)×0.12×麦汁量(リットル)
        • 15℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁の糖度(P)×0.08×麦汁量(リットル)
        • 7℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁グラビティユニット(GU)÷4×0.3×麦汁量(リットル)
        • 9℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁グラビティユニット(GU)÷4×0.2×麦汁量(リットル)
        • 12℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁グラビティユニット(GU)÷4×0.12×麦汁量(リットル)
        • 15℃でのドライ酵母投入量(g)=麦汁グラビティユニット(GU)÷4×0.08×麦汁量(リットル)
 

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