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●ムーンストーン(月長石) KALSi3O8
「ムーンストーン」は、その日本名「月長石」が示すように、一般的には月の光のような効果を示すフェルドスパー(長石)族の鉱物の宝石名です。
ムーンストーンとは、宝石名であって鉱物名ではありません。鉱物の正式な名称は現在ではIMA(Intwernational Mineralogical Association:国際鉱物学連合)によって命名されます。
しかし宝石の名称についてはそのような機関が無く、新種の宝石の名は発見者や扱い業者が適宜命名し、一般的になった名前が通用するのが慣例となっています。
現在の鑑別基準では、ムーンストーンは狭義にはオーソクレースに属し、オーソクレース(正長石)とアルバイト(曹長石)の極薄が交互に層状構造をなすもの、とされています。
それでも取引の現場では、シラーを伴うアルカリ長石属の鉱物(オーソクレース(正長石)、アデュラリア(氷長石)、サニディーン(玻里長石)、アノソクレース(曹微斜長石))全般を呼称しています。
しかし近年ではプラジオクレース(斜長石)系のラブラドーライト(曹灰長石)やバイタウナイト(亜灰長石)で、同様の光彩効果が現れるものがむしろ市場で多くなり、美しさも遜色がない為、こちらもムーンストーンとして取引上認知されるようになっています。
ムーンストーンには最高級の透明感を誇るタイプを稀に得られますが、ほとんどのムーンストーンには特有のムカデ(センチピード)状インクルージョンを含みます。
これはムーンストーンに得意なイン来る-ジョンで、ムーンストーン自体の層状構造による歪で出来たクラック層の集合体です。
単体より複数個を内包していることが多く、必ず主結晶のC軸方向に配列している特徴を持ちます。
「レインボームーンストーン」では、特にインクルージョンが入ることは普遍的で、高い透明感を持つタイプは稀少です。
ムーンストーンを含むフェルドスパーグループ(長石族)は大きなグループ名で、分類の方法によって16種類とも20種類を越すとも言われています。
フェルドスパーグループの各種鉱物は花崗岩に含まれる他に、その他の火成岩や地殻変動による変成岩など、多様な成因の岩石に含まれる造岩鉱物として地球上に最も広く分布しています。
また、フェルドスパーグループの中には組織成分の違いにより個溶体を形成するものや、晶出温度などの違いにより結晶構造が変わるものがあり、フェルドスパーグループを理解するのは複雑で厄介なため、宝石学習得過程で投げ出される筆頭対象であろうとも思われます。
この様なフェルドスパーグループは、実は装飾品のみならず、陶磁器、ガラス、肥料、火薬類などの原料としても用途が広く、私達の生活に身近な鉱物でもあります。
●ブルームーンストーンとロイヤルブルームーンストーン
「ブルームーンストーン」は古くから知られており、一般的な市場では「青色シラーを示すムーンストーン」全てを指しています。
現在でも、「ブルームーンストーン」は厳密に言うと、スリランカ産ムーンストーンから稀に出現する、淡い空青色を彩る高品質なタイプを指してます。
しかし、インド、マダガスカルから青色のネオンの様なシラーを表すタイプが産出されると、「ブルームーンストーン」と区別されて、それらには「ロイヤルブルームーン」の名称が与えられました。
「ロイヤルブルームーンストーン」は、鮮やかなネオンの様なブルーシーン(濃青色)と、優しい彩りとなるオーロラの様なシーン(微かな緑の入る青色)の2種類があり、
その他の彩りは「レインボームーンストーン」の範囲に分類されます。また、青〜青緑の色調に黄色が強く入ったタイプは、「ロイヤルブルームーンストーン」の彩りの範囲から外されて、「レインボームーンストーン」の中のオーロラカラーと呼ばれています。
●レインボームーンストーン
「レインボームーンストーン」は他のムーンストーンと違い、ネオン発色を豊かに表現する特別なタイプです。「ロイヤルブルームーン」と同じくシラーの特殊性により区別が行われており、月光の優しい輝きと鮮やかなネオン光彩の溶けあう様子は、他に類を見ない幻想的な輝きを持っています。
ボディカラーが完全に透明な物は少なく、いずれも多少ミルキーな色調を持っています。「レインボームーンストーン」が呈するアデュラレッセンスは、鮮やかなネオンブルーを除き、虹色に含まれる他のすべての色彩で現れ、稀に虹の様に多くの色彩を表すものが見つかることがあります。
ムーンストーンのシラーやアデュラレッセンスにおける青い色合いは、アルバイト(曹長石)成分比が多いと顕著になることが報告されています。
それは恐らく原子のイオン半径がカリウムの0.133ナノメートルと比べてナトリウムでは0.097ナノメートルと小さいので、層が薄いアルバイト成分が多くなると、波長の短い青い光の周波数帯域の吸収が減るために青い光が強調されると考えられます。
こうした内部構造に加えて、結晶内に存在する微細な粒子の大きさが、青と白の光彩効果にも大きな影響があるとされています。
白い光は結晶内部の小さな粒子によって、雲が白く見えるのと同じレイリー散乱の原理で、光が乱反射されるために発現しているとされます。
また青い光の場合は、昼の空が空気中の微細な埃などによる光の散乱で青く見えるのと同じ原理で、結晶に含まれる微細な粒子や構造によるミー散乱で、波長の長い光が吸収され,短波長の青が強調されることで発現しているとされます。
これらの結晶内部の小さな粒子あるいは構造が何なのかは、現在のところ明確な解明がなされていません。
このような内部構造によって光の吸収と散乱とが起きるため、ムーンストーンの結晶に発現する月光のような煌きには顕著な方向性があります。
したがってカボションやファッセットカットの際には研磨面の方向鳥(オリエンテーション)が重要になります。
また南インド産の月長石には淡い緑や橙色,淡黄、ピンク等多彩な色合いがありますが、これらは銅片のインクルージョンや銅イオンによる発色、格子間電荷移動等によって起こる光の吸収と考えられています。即ちサンストーンの発色原因が一部含まれています。
ムーンストーンの産出でかつて世界市場を席捲したのは、スリランカです。その主要な産地は島の南西部で、特に有名なのは海岸近くの湿地帯にあるMeetiyagoda鉱山でした。
Meetiyagoda鉱山自体は、それほど古いわけではなく、1906年に畑を耕していた地元住民に偶然発見された事から始まりました。
湿地帯の風化が激しいカオリンの土壌中で発見されたことから、典型的な漂砂鉱床と思われましたが、掘り進めるに従い、地下20m付近にペグマタイトの初生鉱床が発見されました。これは、スリランカでは稀な原鉱床から直接宝石が採掘される鉱山で、大いに注目されました。
鉱床は、大きさおよそ4000平方m(64m四方)と小さなものですが1987年に採掘が停止されるまで80年余り、世界に高品質のムーンストーンを供給し続けました。
鉱床は、ペグマタイト鉱脈が南東から北西の方向に向かっておよそ30度の角度で上昇し、北西部では20m、南東部では35mの深さに初生鉱床があり、その上部は風化してカオリンとなっています。
風化した層の10%には宝石のムーンストーンの原石が含まれ、25%の高い歩留まりで宝石質のルースが得られました
。一方、源鉱床から得られるルースの歩留まりは1〜5%と低く、地下深部採掘が困難で費用がかかる上に、この歩留まりの低さのために1987年に採掘が放棄されるに至りました。
スリランカのMeetiyagoda鉱山での採掘が放棄されるころ(1979年頃)、南インドで広範に宝石質のムーンストーンが発見されました。
アーンドラ・プラデーシュ州、カルナータカ州、タミール・ナードゥ州、ケラーラ州等で、1980年代半ば頃までは各地で零細な採掘が行われていましたが、次第に産出が増え、現在では世界で最大のムーンストーンの産地となっています。
インド産のムーンストーンは鉱物学的にはプラジオクレース・グループ(斜長石族)のラブラドーライト(曹灰長石)とバイトーナイト(亜灰長石)成分を持つものが多く、市場では一般にラブラドーライトとして「ロイヤルブルームーンストーン」あるいは「レインボー・ムーンストーン」の名で流通していました。
見た目には一般に言うムーンストーンと大差はないのですが、呼称が分けられたのは、長年スリランカ産のアルカリ長石族のムーンストーンが主流であったため、それ以外は亜流として低く評価されてた為です。
しかし、1987年にスリランカの鉱床が枯渇して産出が激減したため、次第にインド産のムーンストーンの評価が高まりました。
実際、スリランカ産の最上級のブルームーンストーンと比べても、インド産品はファセット・カットが可能なほどの高い透明度のルースもあり、しかも大きなルースがとれるため、現在ではむしろより高品質と言って差し支えないでしょう。
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7.23ct 10.1x10.1x6.7
ムーンストーン(月長石) KALSi3O8
☆単斜晶系
☆モース硬度:6-6.5
☆光沢:ガラス光沢
☆屈折率:1.518-1.526
☆比重:2.58
☆産地:スリランカ、ミャンマー、インド 他
☆取り扱い注意:劈開性あり、1方向完全、1方向明瞭
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※2007/11月より全商品ラッピングサービスさせて頂いております。
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