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2007年11月25日

◎学校机に地元産材 木も地産地消の発想が大切

 地元産木材の利用拡大の方策の一つとして、金沢市の金沢産材流通・加工推進委員会が 、学校の机の一部に金沢産材を使うことを提案した。木も地産地消の発想で、日常生活や教育現場で有効利用することが、ゆくゆくはふるさとの森林保全につながることを、あらためて県民に周知したい。

 木を伐採することは、一見、環境破壊につながるとの指摘もあるが、国産材需要の冷え 込みで、伐採期に入ったスギやヒノキが半ば放置状態の山林では、日光不足による荒廃が進み、治水効果も低下が著しい。伐採して植えるという作業をバランス良く積み重ねていけば、環境保全につながるという専門家の意見もある。そのために県産材の消費拡大が求められている。

 県産材に注目が集まる背景には、国内の木材需要の多くを占めるロシア産材が、輸出税 率アップにより高騰していることや、中国やインドなどの輸入増加で、安定して入りにくい状況になっていることが挙げられる。住宅メーカーなどでは国産材に切り替えるところも増えてきており、北陸の森に「伐採」「植栽」「育成」という健全なサイクルを取り戻すために追い風となるだろう。

 石川県は、いしかわ森林環境税を活用した森づくりについて、ソフト面でもアイデアを 県民から広く募っている。森林環境税の九割が、手入れ不足の人工林の整備に充てられるのは当然としても、木を有効利用する意味で、残る一割は木をいかに日常生活に取り入れるかという発想も柱にアイデアを募りたい。

 富山県では、水と緑の森づくり税を導入した今年、公共施設の内装の木質化の推進など と合わせて「県産材ベンチ」のコンペを実施し、優秀作品百基を人の集まりやすい県内の公共機関の待合所などに設置している。これなどは県民参加の利用拡大イベントの好例だろう。

 先の金沢市の推進委の提案の中には、学生らの発想を生かし、児童生徒の教材や遊具な どに木の素材を取り入れたり、金沢の街並みに調和する木製品の開発なども挙げられている。食育という言葉が定着してきたが、「木育」という言葉も聞かれるようになってきた。身近なところに木を生かすキーワードにしたい。

◎子ども「駆け込み寺」 名ばかりにならないよう

 子どもが危険を感じた時に「駆け込み寺」のように一時的に避難できる「子ども110 番の家」が、富山県内で昨年一年間に二千カ所増加したことは、児童を狙った凶悪犯罪が多発していることを裏付け、背筋の寒くなる思いもするが、同時に、地域の防犯意識が高まってきたことを示していると言えよう。

 ただ実態として留守がちの家であったり、存在自体が子どもに知られていなかったりと いった問題点も、指摘されている。設置することが犯罪抑止につながる側面はあろうが、看板を掛けただけの「名ばかり」状態では十分な効果は得られまい。これまで以上に地域と警察一体で、講習の場を設けるなどしてマニュアルの徹底を図り、個々の110番の家の機能を高めてもらいたい。

 子ども110番の家は、一九九七(平成九)年度から始まった取り組みで今年十年目と なる。不審者からの声掛けやつきまとい被害、あるいは交通事故に遭った場合など、一時的に子どもを預かり110番通報する役割を担う。昨年末現在、石川県では約五千五百カ所、富山県には約一万二千カ所が委嘱されている。

 防犯ボランティアの巡視などで、不審な声掛け事案の発生件数は両県とも減少傾向だが 、ひとたび110番の家に被害者が駆け込んできた場合は、近くに不審者が潜んでいる可能性もあるだけに、生半可な気持ちでは引き受けられまい。

 石川県内では七月に津幡署などが県内で初めて管内の地域ごとに委嘱者の研修会を開い たようだが、警察や教委の指導で対応マニュアルを再確認し、心構えを説く場がより多く設けられてもいいだろう。

 また、とりわけ子どもは知らない家には駆け込みにくい傾向が強いだけに、日ごろから 110番の家を認知してもらうことも大切である。南砺市福野地域のように、110番の家を訪ねるウオークラリーを開催しているところもあり、他地域も参考になる。

 コンビニや事業所などが110番の家に委嘱される場合も多い。地域貢献の点で、分か りやすい「企業市民」活動であり、万一の時に従業員やアルバイトが適切な対応を取れるようにしておくことが大切だ。


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