フランスと言えばパリが浮かび、この国の人は毎日、ワインを飲んでいるのだろう―などと考えてしまいがちだが、パリに住む武部磨美さん(岡山市出身)の「メールでこんにちは!」(本紙家庭面)によれば、パリは今、すしや武道がブームとか。ちまたには世界の情報があふれていても、私たち一人一人が持つ外国に対するイメージはとかく限られている。
先日、岡山市で開かれた「外国人による日本語弁論大会」(大学婦人協会岡山支部主催)。あるフランス人留学生は、日本と言えば東京や渋谷のイメージを持って来日したが「岡山に渋谷はなかった」と語り、笑いを誘った。そして「皆さんにもフランスの本当の姿を知ってもらいたい」と呼び掛けていた。
大会の出場者十五人は、大半が県内の大学や高校で学ぶ留学生で占められていた。日本で日本らしさを感じ、母国オーストラリアらしさについて考え始めたという高校生。中国人留学生は学校給食の残飯の多さに驚き、子連れ留学中のバングラデシュ人女性は、大家族の中で子どもが育つ母国に比べ、「日本の母親一人きりでの子育ては大変」と指摘。聴衆を聞き入らせた。
弁論大会は来年、二十五回目を迎えるという。岡山県では近年、留学生だけでなく、結婚や仕事で定住する外国人が増加している。留学生の異文化体験もそれぞれ示唆に富んでいたが、生活者はどんな体験を持ち、意見を持っているのだろうか。来年は「外国人と言えば留学生」という狭いイメージを払い、外国人たちに幅広く門戸を開けてほしいものだ。
(編集委員・清水玲子)