発売日に岡山市内の書店をのぞくと赤い表紙を見つけ、早速手に入れた。レストランやホテルの権威ある格付け本として知られるミシュランガイド東京版だ。
レストラン部門では、日欧の匿名調査員が一年以上かけて都内の千五百店で食事し、素材の質、料理の技術やセンスを調べ、ランクを決めた。最高評価の三つ星は八店あった。
パリでも三つ星は十店しかない。ガイドの総責任者は「東京は世界に輝く美食の都市」と礼賛した。二つ星や一つ星も合わせ掲載された百五十店のうち六割以上を会席、天ぷら、ふぐ、鉄板焼きなどの日本料理が占めている。
三つ星を獲得した八十二歳のすし店経営者はこの道四十年のベテランだ。究極のすしをにぎるため、コーヒーなどにおいの強い食品は口にせず節制を心掛けてきたという。この人のすしなら、きっとおいしいだろう。
ただし三つ星ともなると料金もそれなりである。四万円を超える店もある。気軽に立ち寄るというより、財布と相談したうえで入店する覚悟が必要だ。地方と東京の格差の大きさも実感する。
偽装ばやりの昨今である。ブランド牛と称し別の地方の牛肉を販売していた老舗料亭もあった。うまいかうまくないかぐらい自分の舌と鼻と目を信じて判断したいが、ブランドにだまされてしまう。店の格付け本を頼りにするのも少し情けない気がする。