◇19病院で転送拒否、高崎さん遺族も参加
自分らしいお産を考える講演会「わたしたち、どこで産もうかな?」が24日、奈良市登大路町の県文化会館であった。幼い子ども連れや出産を控えた妊婦ら約250人が参加した。昨年8月、大淀町立大淀病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に転送を断られた末、死亡した高崎実香さん(当時32歳)=五條市=の遺族も会場を訪れ「一日も早く安心して産める場所を」と訴えた。【曽根田和久】
助産師や出産経験のある女性らでつくる「安心してお産ができる奈良県にしたいの会」主催。高崎さんの問題をきっかけに、「なぜ高崎さんは死ななければならなかったのか」という疑問から、県内の産科の事情を調べ始めた葛城市の主婦、内藤恵美子さん(59)らが今年8月、同会を結成した。現在会員は14人。県内のお産環境の向上を目指して活動している。
ユニセフ(国連児童基金)の「赤ちゃんに優しい病院」に認定された上田市産院(長野県上田市)副院長の産婦人科医、広瀬健さんは「産む力・生まれる力を支える地域であるために」と題して講演。産科医不足による拠点病院への産科医の集約化について「現実にはうまくいっていない。北海道ではお産の場所まで100キロも離れていることもある」と疑問を投げかけた。ニュージーランドで出産の大部分を助産師が担っている現状や、集約化を見直した英国の例を紹介した。
広瀬さんは「女性を中心にしたお産の仕組みを考えることが必要。日本も助産師がお産を支え、産科医は危険な出産を担当し、搬送システムなどを地域が担う仕組みが必要。このままではお産を担う人が誰もいなくなってしまう。一部の人だけでお産の環境を決めるやり方はやめよう」と参加者に語りかけた。
講演を聴いた高崎さんの義父憲治さん(53)は「高次医療を担う病院が常に忙しい状態にならないために、助産院や1次医療を担う産科の充実が必要だと感じた」と語った。11カ月の長男と参加した奈良市の主婦、辰巳陽子さん(32)は「子どもが元気であれば、自然な状態で産みたい。お産が少しでも女性の理想に近づいてほしいと思い参加した」と真剣な表情だった。
毎日新聞 2007年9月25日