インド洋での給油活動を終えて、海上自衛隊の補給艦「ときわ」が東京・晴海埠頭(ふとう)に帰ってきた。日本がアフガニスタンでの国際社会のテロとの戦いに背を向けてから、刻々と時が経過している。
福田康夫首相が民主党の小沢一郎代表ら野党党首と個別に会談した。首相は給油活動再開のための新テロ対策特別措置法案成立に向け、小沢氏に協力を要請した。
小沢氏は、法案が憲法に反するとの基本的考えは変わらないとし「折り合いをつけるたぐいのことではない」と突っぱねて物別れに終わった。与野党は二十八日に参院本会議で法案審議に入ることでは合意しているものの、これまでと違う本格的な論戦は期待し難い状況だ。
首相は、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法など安全保障問題や、年金・社会保障問題についての協議機関設置なども提案したが、小沢氏は「国会議論の中で結論を得るべき」と拒否した。
テロ封じ込めに日本がどうかかわっていくかは、日本の国際的立場や今後の進路にかかわる重要な事柄である。それなのに、参院で次の貢献策について一向に議論が進まない状況は許されない。
だが、首相から切迫感はあまり伝わってこない。逆に次期総選挙をにらみ、国会が動かないのを小沢氏や民主党のせいにし、選挙を有利に導く意図がうかがえる。
民主党の姿勢は納得できない。法案に反対を唱え、守屋武昌前防衛事務次官と防衛商社の癒着や海自の給油量訂正問題、さらに額賀福志郎財務相の問題などを絡めて追及していくつもりのようだ。審議時間も衆院に準じるだけの確保を要求しているが、今までと同様に議論が入り口で空転し、新法案や新たな国際貢献をめぐる本格論戦には入れない可能性が高い。
民主党は民生分野を中心としたアフガン支援策をまとめつつあるが、いまだに法案として固まり切らない。今の民主党の態度からは、安全保障政策をめぐって党内がまとまらず、早期の総選挙も怖いという内部事情による引き延ばし戦術が透けて見える。
議論の舞台となる参院外交防衛委員会ではテロとの戦いにどう加わるかの本質議論を戦わせ、疑惑関係は特別委員会など別に組織を設けて解明を進める手もあるはずだ。またはその逆でもいい。
自民、民主両党には総選挙を横目にした党利党略が目立ち過ぎる。対テロの貢献策は政治的な駆け引きの材料にする問題ではない。両党は考え直して、一刻も早く本格議論に着手すべきだ。
サッカー男子が、北京五輪の出場を決めた。アトランタ、シドニー、アテネに続く四大会連続八度目となる。晴れ舞台での活躍が楽しみだ。
北京五輪のアジアの出場枠は、開催国の中国を除いて三となっている。最終予選は十二チームが三組に分かれ、各組一位だけが出場権を獲得できる厳しい戦いだった。
五輪予選は二十二歳以下で争われ、日本は二月から始まった二次予選を六戦全勝で最終予選C組に駒を進めたものの、十月のカタール戦で逆転負けし、二位に後退した。非力な攻撃と、失点すれば浮き足立つ未熟さが指摘された。
五輪切符に赤信号がともった。だが、今月十七日のベトナム戦に圧勝して首位に立ち、東京・国立競技場でのサウジアラビアとの最終戦では、引き分けながらC組一位を決定した。
日本代表チームを率いた反町康治監督は「一回地獄を見たのでその分、跳ね上がる力が強かった」と選手をたたえる。四大会連続出場は日本サッカーの地力を見せつけたといえるだろう。
五輪サッカーで思い出すのは、日本が銅メダルに輝いた一九六八年のメキシコ大会だ。その後は低迷が続き、九六年になって、二十八年ぶりに出場を果たした。Jリーグが発足し、サッカー熱が高まったことが背景にあった。
現在のサッカー人気を維持するには、ワールドカップ(W杯)や五輪での日本代表の活躍が欠かせない。来年の北京五輪本大会では、メダル獲得の夢が膨らむ。
日本サッカー協会は、反町監督が本大会でも指揮を執ることを明らかにした。本番に向け、日本の欠点とされる得点力不足を解消するために一段とレベルを上げてほしい。
(2007年11月24日掲載)