全国的に病院事業の赤字が自治体財政を圧迫しつつある中で、九州・山口でも自治体病院の経営のあり方が大きな行政課題となっている。統廃合や民営化の議論は、地域生活に直接影響するだけに難しい問題をはらんでいる。【安部拓輝、井上秀人】
04年に旧大和町と合併し、二つの自治体病院を抱えた山口県光市では06年3月、都市部の光総合病院を救急患者用の急性期病院に、山間部の大和総合病院を療養中心の慢性期病院に機能分化させる計画を打ち出した。
しかし、3カ月後に成立した医療制度改革関連法で療養病床の大幅な削減が決定。市から経営計画の再検討を依頼されたコンサルタントは6年後には病院の資金残高が底をつくと試算。「2病院の維持は困難」と結論づけた。これには、市議会では旧大和町出身の市議が「地域の拠点病院をつぶすな」と反発。病院局側は5年後以降に片方の病院の民営化も視野に検討を続けている。
同様に合併で2病院を抱える山陽小野田市は10月、不良債務が約9億円にのぼる山陽市民病院を来年3月末で廃院し、小野田市民病院に統合すると発表した。白井博文市長は会見で老朽化した山陽市民病院の大規模改修について「財政的に難しい」と説明。同地区の医療体制は山口大医学部付属病院などと連携して対応する予定だが、地元では病院存続を求める署名運動に発展している。
◇福岡市長は移譲前向き
06年度決算で6年連続の財政赤字を計上した福岡県大牟田市では、約45億円の累積赤字を抱える市立総合病院の経営形態検討委員会が先月初め、「目指すべき経営形態は指定管理者制度の導入」とする答申を古賀道雄市長にした。答申後、今月18日に投開票された市長選で再選された古賀市長は「引受先の問題などもあり、1年以内に市としての計画を取りまとめたい」と話している。
福岡市でも市立病院の赤字体質は課題だ。同市では、市民病院とこども病院の統合移転案があったが、経営効率の面から白紙に。市内には大学病院などの高度医療機関が整備されており、市民病院については「市が政策的に担う必要性が希薄化している」と判断。吉田宏市長が民間移譲に前向きな姿勢を示している。
毎日新聞 2007年11月24日 西部朝刊