医師不足の地域医療に役立てようと、福岡県で4救急病院などを運営する医療法人財団「池友会(ちゆうかい)」(本部・北九州市、蒲池真澄会長)が08年度から医師や看護師が同乗する民間版ドクターヘリを導入する。池友会によると、補助対象外の病院が独自に導入に取り組むのは、離島の多い沖縄県を除けば全国で初という。
池友会は、系列の福岡新水巻病院(福岡県水巻町)に今年5月に周産期センターが完成、また来月には4救急病院でヘリポート態勢が整うこともあり導入を決め、業者と年間1億7000万円でリース契約を結んだ。県北部にヘリ基地と格納庫を設け、医療機関や消防などの要請で対馬(長崎県)など離島を含む九州北部を中心に、年間150件の出動を見込んでいる。
ドクターヘリは主に危険が迫った患者を搬送対象とするが、池友会は症状の軽い患者や病院間転送、スタッフや機材搬送にも柔軟に使う考え。患者に搬送費用は請求しないという。詳しい事業計画は今後、他の医療機関や行政側と協議する。
池友会の鶴崎直邦理事長(60)は「救急医療は最初の1時間が勝負のため『飛び道具』を使うことにした。医師不足の地方医療にも貢献できるのではないか」と話す。
国や都道府県が補助するドクターヘリ事業は、国から救命救急センターの認可を受けた病院に限定され、久留米大学病院(福岡県)、長崎医療センター(長崎県)の九州2カ所を含めて11道県の12病院に配備されている。ヘリには医療機器が搭載され、現場到着後すぐに治療が可能。救急車より速く、遠くに患者を搬送でき、道路損壊を伴う災害時にも力を発揮する。欧米ではドイツの70機以上など配備数が多い。
ドクターヘリの普及に取り組むNPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」(本部・東京)の村田憲亮事務局長は「公的機関は財政難にあり、資金力のある民間病院が取り組めば普及が進む」と歓迎している。【降旗英峰】
毎日新聞 2007年11月24日 西部夕刊