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2007年5月 3日 (木曜日)

B型肝炎ウイルスに関する誤解

病腎移植 B型肝炎感染か 宇和島病院調査委報告 術後に死亡例
4月30日8時0分配信 産経新聞
 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)が前任の市立宇和島病院で行った病腎移植で、B型肝炎ウイルスに感染していた患者の腎臓を移植された男性が肝障害などで死亡していたことが同病院の調査委員会の調べで分かった。移植された病腎と患者の死因の因果関係が指摘されたのは初めて。調査委は29日、同病院で実施された病腎移植25例は「すべて不適切だった」とする最終報告書を病院側に提出した。
 報告書などによると、万波医師は平成12年12月、同病院でネフローゼ症候群の患者の両腎を摘出し、移植に使用。患者は手術前の検査で、B型肝炎ウイルスが体内にいることを示す「HBs抗原」が陽性だった。
 腎臓を移植された男性はその後、腎臓が機能せずに人工透析を再開。約3カ月後に別の腎がん患者から腎臓の提供を受けた。この時、男性のHBs抗原は陰性だった。しかし男性は、その約2カ月後に肝障害と重症膵(すい)炎で死亡。死亡前の検査ではHBs抗原も抗体も陽性になっていた。
 移植を受けたもう1人の患者は現在も生存しており、感染していない。
 調査委の深尾立(かたし)委員長(千葉労災病院長)は記者会見で「移植と死亡の因果関係はかなりある。ウイルスが持ち込まれた可能性も否定できない。こういう(ウイルス性の)患者からの移植は絶対にやってはいけない」と批判した。一方、万波医師は「治療によりB型肝炎は陰性でウイルスそのものが存在せず、当時、肝臓の専門医に移植に使っても問題ないことを確認した」と反論している。
最近多くのメディアで取り上げられていますが、記事の本筋では無いとは言え、これらの記事にはB型肝炎ウイルスに関する誤解があります。

書いてる人が充分な知識を持たず、批判のために憶測で書かれた部分があります。
そもそも、HBs抗体が陽性ならば、問題ありません。
抗原と抗体に関する説明が全くない。
私は、抗体が陽性になるべく治療しているのです。

このケースでの肝障害は、肝炎ウィルスに起因するものではあり得ないはずです。
実際、多くの記事が「B型肝炎感染」としています。結論は「違います」です。

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コメント

 クーさん、他の新聞社の記事を見てもHBs抗原陽性とあります。これはウイルスが存在することであって、感染する可能性はきわめて強いと思うのですが。
 いかがでしょうか。

 また、HBs抗体陽性の親族から生体肝移植を受けた場合でも、京大などの調査では、B型肝炎ウイルスに感染し、肝炎を発病される場合が多いとあります。

 いずれにしても、今回の事件の場合は、B型肝炎感染経験のある方からの病気腎臓移植は間違いだったと思うのですが。
 私もB型肝炎患者ですので、非常に注目している事件です。

投稿 sin | 2007年5月 7日 (月曜日) 午前 10時56分

まず、私は万波医師を擁護するつもりは毛頭ありません。
確かに私の知識は不足しているかもしれません。

しかし、情報が不足しているにもかかわらず、「~か」とか「因果関係も否定できない」と言った、確定していない憶測的な記事が一人歩きしているのではないかと感じるのです。

単純に抗原が陽性、抗体が陽性ではなく、実際はもっと具体的な、どのウィルスをどの程度保有しているか、抗体の量、炎症の度合い、肝硬変の進行度などと言った情報があるはずです。
臓器提供者、移植者共に、急性感染者だったのか、持続感染者(HBVキャリア)だったのかもわかりません。
キャリアでなければ、ワクチンが効くはずです。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/01-02.html

移植そのものは問題があると思います。
ただ、肝障害と死亡要因との因果関係は判然としないものがあるように思うのです。

私自身、ドナーになる意思はあります。当然、現在の体では不可能です。完治しても不可能なのだろうか?と疑問に思っています。

投稿 クー | 2007年5月 9日 (水曜日) 午後 10時56分

こんにちは。検索で来ました。ドナーはHBs抗原陽性、HBe抗原陰性、HBe抗体陽性で肝障害なし。いわゆる、セロコンバージョン後のキャリアの状態です。当時の常識でもドナーは感染力ありです。おそらくHBV-DNAは測っていません。レシピエントはHBs抗原陰性だったのが陽性化していますので、移植によってB型肝炎に感染可能性は高いと思います。ですので、記事の「B型肝炎感染か」というのは正しいです。

レシピエントの肝障害にB型肝炎が関与した可能性も高いと私は考えます。なぜなら、死亡直前にはHBs抗体が陽性化しつつあり、肝炎ウイルスが免疫による排除を受けていたと考えられ、よって肝障害を伴うのが通常であるからです。ご存知かもしれませんが、B型肝炎の肝障害は、ウイルスそのものによるのではなく、ウイルスに感染した肝細胞に対する免疫系の攻撃によるものです。HBVによる膵炎も報告例があり、「移植と死亡の因果関係はかなりある」というのも正しいです。

ご指摘のように、ワクチンの使用は効果があります。加えてHB免疫グロブリンやラミブジンを初めとした核酸アナログの使用により、B型肝炎陽性者をドナーとした移植も最近ではなされつつあります。問題は万波医師がB型肝炎の感染力を過小評価しており、そうした感染予防対策をおそらくとっていなかったことにあります。

投稿 NATROM | 2007年6月30日 (土曜日) 午後 10時48分

 B型肝炎患者です。
>私自身、ドナーになる意思はあります。当然、現在の体では不可能です。完治しても不可能なのだろうか?と疑問に思っています。

 B型肝炎ウイルス既感染者は、HBs抗原陰性、HBs抗体陽性でも、臓器提供(生体肝移植・脳死肝移植)すれば、多くの例で臓器を受けた患者はB型肝炎を発症したのと報告が京大移植外科からありました。

 HBV遺伝子が、人間の肝細胞の核の遺伝子に組み込まれるからとのことのようです。

投稿 sin | 2007年7月 6日 (金曜日) 午前 09時30分

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