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自治体病院:累積赤字1兆8585億円 地方財政圧迫--06年度末

 全国の自治体病院の累積赤字が06年度末で1兆8585億円に上ることが、毎日新聞の調査で明らかになった。総務省によると、全地方自治体の医療関連収入の約半分にあたり、累積赤字を抱える自治体は全体(約670)の8割以上になる。国は08年度決算から、地方公営企業会計などを含めた連結の収支で財政の健全度を測る制度を導入することにしており、病院事業の赤字が自治体財政を圧迫する状況が顕在化するのは必至だ。

 毎日新聞が全国の本支社、総支局を通じ、都道府県などの担当部署に取材した。自治体病院は06年度、968施設。自治体は一般会計などから計7000億円近くを補てんしているが、年度ごとの収支の赤字を示す純損失は計約1970億円と05年度末から約500億円増加。累積赤字も約900億円膨らんだ。

 自治体ごとに病院会計への補てんの基準が異なり、単純比較はできないが、都道府県立と市町村立、組合立の累積赤字の合計が北海道(1941億円)、兵庫(1911億円)、大阪(1486億円)で1000億円を超え、愛知でも900億円台に達した。自治体病院が多い地域ほど赤字額も大きい傾向にあるが、計8施設の沖縄では500億円を超えた。

 都道府県立では、兵庫(12施設)の累積赤字が724億円で全国最大。次いで北海道の612億円(7施設)だった。市町村立(政令市を除く)、組合立は北海道が1166億円(94施設)、大阪が914億円(17施設)。

 累積赤字が巨額になった背景には、施設建て替えの償却費用が膨らんでいることに加え、職員給与や人事体系の硬直化などが指摘されている。診療報酬のマイナス改定や医師・看護師の不足に伴う診療科の縮小が患者離れと経営悪化に拍車をかけている。地方では人口減少で経営の悪化が進む一方、都市部では各自治体が総合病院を運営し、連携不足で医師や患者を奪い合うケースも多い。

 総務省の懇談会は今月、公立(自治体)病院の改革ガイドライン(指針)案を策定。自治体に各病院が3年以内に経営の効率化を進め、一般会計の補てんを含め単年度での黒字に転換するよう求める方針だ。ただ、代替病院などが整う都市部に比べ、過疎地では自治体病院が地域医療の中核を担っている地域が多い。閉鎖や縮小は住民に悪影響を及ぼす可能性があり、財政再建と地域医療確保の両立が課題となる。【まとめ・田畑悦郎、井出晋平】

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 ■ことば

 ◇公立(自治体)病院改革ガイドライン

 自治体病院の経営改善のため、国が地方自治体に数値目標を含めた改革案の作成を求める指針。今月、総務省の有識者懇談会が案をまとめた。数値目標を掲げ、3年連続して病床利用率7割未満の病院には病床数の削減や診療所への転換などを求めている。また、地域の基幹病院を機能集約し、周辺病院の診療所化など再編も促している。総務省は病院再編への財政支援などを合わせた指針を年内に正式にまとめる。

毎日新聞 2007年11月24日 東京朝刊

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