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猫用ワクチン:ウイルス混入 感染の恐れは低い 京大調査

 猫の感染症に対する3種混合ワクチンに、感染力のある想定外のウイルスが混入していることが京都大ウイルス研究所の調査で分かった。混入量は非常に少なく感染の恐れはほとんどないが、農林水産省は過去に販売されたすべての猫用ワクチンについて、同様のウイルス混入がないか調べる方針を決めた。

 ウイルス混入が確認されたのは、ウイルス性鼻気管炎などの感染症に対する猫用の3種混合生ワクチンで、動物病院などで使われている。研究チームの分析の結果、「RD114ウイルス」が検出された。レトロウイルスと呼ばれるタイプで、細胞内の染色体に入り込む性質を持っている。

 このウイルスがどのような症状を起こすかは不明だが、検出量はワクチン1ミリリットル当たり10個未満と少なく、ワクチンを接種された猫が深刻な症状を起こす恐れは非常に低いという。動物園でライオンなど猫科の大型動物に使う場合には使用量が多くなるが、安全性は確認されていないという。

 生ワクチンは、対象疾患を起こすウイルスの毒性を弱め、生きたまま使う。製造時にウイルスを増やす際に動物の細胞を使うが、利用した猫の細胞中のウイルスが活性化して混入したらしい。製造過程では、このような混入ウイルスはチェック対象ではない。人の生ワクチンではウイルス混入を否定する試験が繰り返されるという。

 同研究所の宮沢孝幸准教授は「混入量が増えたり、このウイルスに免疫を持たない他の動物に接種すれば、感染する危険性はある。対策を検討すべきだ」と話す。

 ▽感染症に詳しい山内一也・東京大名誉教授の話 ワクチンには別のウイルスや病原体が混入してはならないが、今回の研究で別のウイルス混入の可能性が判明した。人や他の動物用のワクチンも同じだ。想定外のウイルスに対するワクチンの品質管理をどうするのか、ワクチンの恩恵と危険性のバランスをどう考えるかの議論が必要だ。【永山悦子】

毎日新聞 2007年11月24日 2時30分

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