皆さんは、岡山県暴力追放運動推進センターをご存じでしょうか。一九九二年施行の暴力団対策法に基づき設立された財団法人で、今年開設十五周年を迎えました。弁護士や県警OBが被害相談に乗るほか、組事務所明け渡し訴訟費の無利子貸し付けなどで、地域の暴力追放運動を支援しています。
センター発足前、岡山市では門田屋敷や西古松、福成地区などで、暴力団組長らが家族名義で不動産を購入するケースが相次ぎました。暴対法の網を逃れるため、看板や代紋を外し“新天地”を求めていたのです。
通常の商取引だけに第三者の介入は難しく、組事務所進出反対運動は数カ月に及ぶこともありました。取材では法務局で登記簿を取得し、物件の所有権移転を確認する日々。しかし、山口組と竹中組の抗争事件で嫌というほど恐怖を味わった住民の団結力は強く、対象のビルを共同で買い上げて解決した時の盛り上がりは忘れられません。
暴対法の狙いは組織から人、金、物を締め出すことでした。しかし、用心棒代などの不当要求が規制され、暴力団の資金集めは巧妙化。株や土地取引といった経済活動、最近は振り込め詐欺グループに関与するなど、ある意味、市民生活にとってより身近な存在になったといえます。
暴追センターにも、昨年一年間で個人や企業から六百件を超える相談がありました。駆け込み寺としての活動周知も大切ですが、住民パワーがみなぎった十五年前の“暴追元年”の機運が再び地域に根付き、監視の目を強めることが最大の防御かもしれません。
(社会部・広岡尚弥)