高まるドル崩壊の懸念 「基軸通貨にユーロ」の声も
11/22 15:15更新
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■チャイナリスクで底値見えず
欧米で“ドル崩壊”による経済危機の可能性を指摘する声が高まっている。サブプライム(高金利型)住宅ローン問題による米国経済への影響が見極めきれない中、大量のドルを保有する中国がドル売りを示唆したことで市場に混乱が広がった。急激なドル安は米国の輸入を大きく減少させるだけでなく、双子の赤字をドルの信用で支えてきた米国経済に致命傷を与えかねない。ドルに代わる基軸通貨として、欧州統一通貨ユーロの台頭を予想する声も出始めた。
◆「経済の真珠湾攻撃」
「強い通貨(の値上がり益)で、弱い通貨の穴埋めをしなければならない」
今月7日、北京で行われた全国人民代表大会(国会)で共産党の成思危・常務副委員長が、外貨準備の見直しにふれたこの一言が、世界の金融市場に衝撃を与えた。中国の外貨準備は世界最大の1兆4300億ドル(約158兆円)。このうち6~7割を占めるといわれるドル建て資産の売却に動けば為替市場の混乱は避けられない。
この発言で、英ポンドが26年ぶりに1ポンド=2・1ドルの壁を突破したのに続き、12日の東京市場でも円相場が一時1ドル=109円台に突入。ヘッジファンドなどが、ドル建て資産から金に乗り替える動きも活発化し、金は1980年1月に記録して以来の1オンス=850ドルの大台に迫った。米国にはインフレ不況が深刻化した70年代後半の「ドル危機の再来」と受け止めるエコノミストもいる。
中国の外貨準備見直し発言は、12月に北京で予定されている次回の米中経済戦略対話を前に人民元切り上げで「目に見える成果」(ポールソン財務長官)を求める米国側を牽制(けんせい)する狙いともみられるが、欧州メディアは米中関係が悪化すれば、中国がドル下落に無防備な米国に「経済の真珠湾攻撃」(独誌シュピーゲル)を仕掛け、「切り札の“核攻撃”の脅迫」(英紙テレグラフ)が絵空事ではなくなると警鐘を鳴らした。
予想以上の反応に驚いた中国人民銀行の易綱総裁補は14日、見直し案は「学者らの議論」として、ドル中心の運用姿勢を変えない方針を表明した。しかし、いつ暴落の引き金になるとも知れない“チャイナリスク”の存在が改めてクローズアップされたことで、市場は警戒を強め、サブプライム問題による米国経済の長期低迷予測と相まって長期的なドルの底値は見えにくい状況だ。
ドルへの不信感を強めているのは、金融市場だけではない。ブラジルのスーパーモデル、ジゼル・ブンチェンさんが、ドル下落による目減りをきらい、米家庭用品大手プロクター・アンド・ギャンブルの広告出演料3000万ドル(推定)の支払いをユーロ建てにするよう要求したことが先週、メディアをにぎわした。英紙ガーディアンによると、ニューヨークでは、外国人旅行者がパスポートを見せると、ドル建て値札を11%引きとする有名百貨店が現れるなど、消費の最前線にまでドル下落の混乱は広がりつつある。
◆「物々交換に逆戻り」
ドル下落が続けば米国債が売れなくなり米長期金利が上昇。米国の企業収益や住宅投資を一段と圧迫する。このほか国際貿易を混乱させるとの懸念が強まっている。
「ドル安に気をつけなければ経済戦争になる可能性がある」
先週、ワシントンを訪れたサルコジ仏大統領は米議会の演説でこう警告した。目先のユーロ高ドル安で欧州の対米貿易赤字が拡大し、貿易紛争を招きかねないというわけだ。欧州だけでなく韓国輸出産業を代表する現代自動車の米国内売り上げも今年、過去9年で初の減少に転じる見通しだ。
ドルが、貿易取引の決済などに使われる基軸通貨の座からすべり落ちる可能性も指摘されている。アラブ首長国連邦(UAE)のスウェイディ中央銀行総裁は13日の講演で、ペルシャ湾岸6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)が導入を検討している統一通貨についてドル連動構想を改め、複数通貨のバスケット制を軸にする考えを明らかにした。ドルは安定性に欠けると見切りを付けた格好だ。
ドルが基軸通貨としての信任を失えばどうなるのか。米レーガン政権下で「レーガノミクス」を主導したクレイグ・ロバーツ元財務次官補は先週、インターネットラジオの番組で「ドルの崩壊は、最終的に世界貿易を物々交換の時代に逆戻りさせる」と指摘した。
ドル下落の一方、誕生以来、ユーロの価値はドルに対して6割も上昇した。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米証券大手リーマン・ブラザーズの為替部門の責任者、ジム・マコーミック氏は「ユーロをドルの後継(基軸通貨)にするという考え方は、かなり受け入れやすくなってきた」と話している。(佐藤健二)
◇
■人民元が受け皿の可能性も
日本総合研究所・牧田健主任研究員の話 ドル下落のペースに市場では危機感が高まっている。米国債の買い手が、かつての日本から、中国のほかロシアや中東諸国の国家ファンドなど不安定な資金の出し手にシフトしていることが市場関係者の不安の背景にある。ただ、中国は、一度に大量のドル売りに走れば、自らの保有資産の価値を減少させるため、緩やかに売却を進めることになろう。急激なドル下落には主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の協調行動も予想されるが、現状ではドル安防止への効果はほとんどない。さらに大きな枠組みでの国際協調が必要になる。
米国の経済力は相対的に低下しているものの、基軸通貨としてのドルの需要がただちになくなることはない。ユーロは徐々にドルの受け皿としての存在感を増すことになろう。むしろドルの受け皿として使われるのは人民元になる可能性もある。将来的に米国に対抗できるのは中国だけだからだ。
ドルが中長期的にどこまで下がるかの予想は困難だが、主要通貨に対し1995年時点の水準が底になるのではないか。(談)
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