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消費税率引き上げの必要性を明記した政府税調の答申など
【社会】緊急地震速報 教授困惑『起きやすい状況で実験』 『追突2割』は風評?2007年11月19日 夕刊 緊急地震速報を、前を走る車だけが受けて減速すると、後続車の2割が追突事故を起こす−。こうしたショッキングな自動車運転実験のデータが放送関係者らに誇張して広まっている。追突の恐れは確かにあるが、実験した千葉大学工学部の山崎文雄教授は「追突事故がかなり起きやすい状況下で実験した。通常の道路条件では2割も起きるとは考えにくい」と説明している。 この実験は、画面を見ながら運転操作や地震の揺れを模擬体験できる装置を利用。時速八十キロで走る車二台に、揺れの前に速報を(1)双方とも流さない(2)双方とも流す(3)前方の車にだけ流す−とした場合、どんな運転行動を取るか各十例ずつ調べた。 その結果、実験(3)では、十例中二例で追突事故が起きた。実験(3)は、カーラジオをつけている車とつけていない車がある状況に近い。速報を受けて、前方の車が揺れ始めより早く急減速し、それに気付いた後続車も慌ててブレーキをかけたが、間に合わなかった。 ただ、実験(3)は速報を流す時点で車間距離が短く設定されていた。後続の運転者による差も大きかったが、実験(1)は七十五−二十メートル。実験(2)は七十−十メートル、実験(3)は三十五−十メートル弱という状況で速報を流した。特に実験(3)は二十メートル未満の例が目立った。 山崎教授によると、実験(3)では、日常的に首都高速などで見られる「車間距離が短くて危険な状況」での影響を調べるため、特に距離を詰めるよう指導したという。 実験データを掲載した論文に、山崎教授は車間距離の違いを明記。気象庁の検討会で昨年十二月に実験結果が報告された際も、車間距離のデータが示され、別の関係者が「なるべく車間を詰めて走るという、ちょっと過度に、危険を半ばあおるような」(議事録から)状況だったと説明した。 だが、そうした前提条件を度外視して、一般的な事故発生のリスクであるかのように「二割で追突事故」と世間に広まっているのが現状だ。 日本民間放送連盟(民放連)は今年二月、気象庁への意見書で「このデータは無視できない」と懸念を表明。特に民放ラジオ局では、追突事故への懸念が今なお強い。 山崎教授は追加実験を行った。実験(3)では四例を追加したが追突事故は起きず、事故は計十四例中の二例だった。 「数字独り歩き」山崎文雄・千葉大教授の話 追突事故が現実に起きる危険性があることを確かめる実験だ。だが回数が少なく、定量的なことは言えない。二割という数字が独り歩きするのは困るし、そんなに起きたら日本中が事故だらけになる。1%も起きないと思うが、きちんと事故率を言うには数百例のデータが必要だ。緊急地震速報がなくても、地震で道路が壊れた所に車が突っ込んだり、ハンドルをとられて衝突するなど事故は起こり得る。 <メモ>緊急地震速報 地震の初期微動をとらえ、大きな揺れの数秒−数十秒前に知らせる。気象庁が10月から、テレビ・ラジオなどを通じた一般提供を始めた。家庭で速報を受けたら、頭部を守り、倒れそうな物から離れる。車を運転中は、後続車の追突を防ぐため、ハザードランプをつけてゆっくり減速、路肩に止めるとされている。
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