ここから本文エリア 使用済みペットボトル価格が急騰 原油高と中国需要増で2007年11月04日 家庭からごみとして出された使用済みペットボトル(廃ペット)の相場が急騰している。廃ペットの再商品化事業を進めている国の指定法人「日本容器包装リサイクル協会(容リ協)」が実施した入札では、今年度の落札価格は1トンあたり3万9千円と、昨年度の2倍以上になった。原料の原油価格の高騰と北京五輪を控えた中国で需要が増えていることが背景にある。
97年に施行された容器包装リサイクル法は、自治体が回収した廃ペットを容リ協が無償で引き取り、入札でリサイクル業者に再商品化を委託する仕組みだった。 当時は廃ペットを繊維やペットボトルに再生してもコスト高になることから、市場ではだぶつき気味。容リ協でも有償では売却できず、処理費用として05年度は同1万4千円を業者に支払って引き取ってもらっていた。 ところが、このところの急激な原油高でペットボトルの原料のポリエステルの価格が上がり、加工費を加えても割安な廃ペットの需要が急増。急速な経済成長を続ける中国への輸出も増えており、業界団体「PETボトルリサイクル推進協議会」(東京都)の推定や財務省の貿易統計によると、05年度は約21万トン(香港も含む)、06年度は約27万トンにのぼった。 取引価格も急上昇し、容リ協でも昨年度の入札から廃ペットに値段がつくようになった。昨年度は1トンあたり1万7千円、今年度は倍以上の同3万9千円で業者に売れた。昨年度は23億円、今年度は約56億円を自治体に分配できる見通しだ。 一方で容リ協に廃ペットを渡さず、独自に入札を実施して売却する自治体も現れ始めた。大阪市は06年度から容リ協への委託をやめ、独自に入札を始めた。06年度は1トンあたり平均5万1千円、今年度も同5万円で売れている。環境局の担当者は「国内でリサイクルする業者に限って入札を認めている。容リ協には無償で引き渡していたが、価格上昇のおかげで貴重な収入になる」と話す。 容リ協と取引する自治体の数はピークだった04年度の2315から今年度は1085に減少。廃ペットの引き取り量も昨年度はピーク時の約3割減の約14万トンになった。 容リ協広報部は「中国での需要の高まりも北京五輪か上海万博までと言われている。自治体の独自入札も現在は順調だが、再び国内で供給過多になって価格が暴落したときには引き取り手がなくなってリサイクルが滞るかもしれない」と懸念している。 ◇ 「入札で価格を上げても落札できない。ここまで環境が変わるとは……」。廃ペットを溶かして紡いだ繊維でカーペットを製造するリサイクル業者「根来産業」(大阪府貝塚市)の根来功社長(70)はため息をつく。 同社は廃ペットリサイクルに早くから取り組み、容器包装リサイクル法施行後の97年からは年間1万2千トン使用する廃ペットの大部分を「日本容器包装リサイクル協会」の入札でまかなってきた。昨年度は8千トンを調達したが、今年度は3千トンに激減した。不足分は協会と契約していない自治体の自主入札に参加してなんとか補った。 根来社長は「十年一昔と言うけれど、今は1年で変わる。先の見通しが立てられず、業界はついていけない」と嘆く。 日本からベトナムの自社工場に廃ペットを輸出してリサイクルしている大阪府和泉市の業者は「今の値段の上がり方は尋常じゃない。つぶれる会社が増えるのも当然だ」と言う。 容リ協に登録しているリサイクル業者は97年度約140社から今年度約60社に減っている。 現在の状況を「ビジネスチャンス」と見る業者もいる。国内、中国合わせて計13のリサイクル工場を持つ「大都商会」(東京都豊島区)の●明輝社長(44)は「(入札の)単価を上げさえすれば、廃ペットを買える。ビジネスのルールが変わった」と話す。 同社は昨年度、民間企業の分も含めて計4万トンの廃ペットを中国に輸出した。うち4割を自治体の入札が占める。中国の自社工場で繊維や卵のパックなどにリサイクルしているという。 同社の売上高は、廃ペットを扱い始めた02年度は10億円だったが、今年度は60億円を超える勢いだという。●社長は「中国は10億人の市場がある。廃ペットの需要も上海万博までとは言わず、まだ増え続ける。値上がりが続いても十分やっていける」と強気だ。
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