駄目を出す、とはもともと演劇の言葉で、演出家が役者に欠点を直させること。お笑い番組を通じて広まり「企画が部長にダメだしされた」など、仕事上の欠陥の指摘や提案への否定を指す言葉として主に若い世代が使うようになった。
▼「この国はダメだし社会。新しいことをやろうとすること自体が罪とみなされる」。起業体験で得た感想を、NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんが最近出版した体験記でつづる。親に代わり病気の子を一時預かる「病児保育」サービスを立ち上げた20代の若者に大人らが投げた言葉は笑い話めいている。
▼「私たちにできないことを未経験のあなたにできるはずがない」と小児科医や保育園の経営者。「母の愛があれば解決する問題」と政治家。仕組みを手直ししたら大手企業の社会貢献担当が「企画書通りではないから」助成金を返せと迫る。地元自治体の職員は「問い合わせ電話がこちらにも来て迷惑」と罵(ののし)った。
▼苦労を忘れさせるのは「このサービスのおかげで仕事を続けられた」という利用者の声だ。「勤労」に対する「感謝」を実感できるのが、ビジネスを通じ人を助けようとする「社会起業家」の面白さ。こうしたNPOや社会ベンチャー志望の学生が増えていると聞く。仕事の意味が見えやすい点も魅力なのだろう。