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2007年11月23日

◎BCリーグに68人 「スポーツ市民」の役割期待

 プロ野球独立リーグ・BCリーグのドラフト会議が行われ、石川ミリオンスターズ、富 山サンダーバーズなど六球団に計六十八人の選手が指名された。好きな野球を本業にするチャンスをつかんだ選手たちが、はつらつとしたプレーで各チームの新たなきらめきになってくれることを期待したい。同時に、「スポーツ市民」として、球場の外でも、地域の信頼を得るための活動に積極的に取り組んでほしい。

 日本プロ野球組織とBCリーグを比べた場合、BCリーグ側の最大の魅力と言えるのは 、選手とファンの距離の近さである。そうしたファンとのきずなを維持するための手段として、球場での全力プレーとファンサービスが有効であるのは言うまでもないが、地域貢献活動もまた、ファンとの距離を縮めるために大いに役立つはずだ。

 加えて、BCリーグ、あるいは野球そのものにそれほど関心がない人たちとも、地域貢 献活動を通じて接する機会を持つことは、新たなファンの開拓にもつながる。そんなファンの声援が、選手やチーム、そしてBCリーグ全体をより大きく育ててくれよう。自分たちが「スポーツ市民」であるとの認識を持ち、地域に溶け込む努力することは、決して単なるボランティアではない。文字通り、「情けは人のためならず」なのである。

 BCリーグはスタート一年目の今年、「試合前に球場で倒れ、急性心不全で亡くなった 新潟県糸魚川市の少年の悲劇を繰り返さないために」と、AED(自動体外式除細動器)の普及活動に取り組み、多くのファンの共感と賛同を得た。能登半島地震や中越沖地震の被災地を支援する募金活動なども展開。ミリオンスターズの選手はシーズンを通して「がんばろう能登」のワッペンをつけて戦い、被災者にエールを送り続けた。

 「スポーツ市民」意識は、一年目にして既に各チームで芽吹いていると言ってよいだろ う。「二期生」たちも、先輩選手を見習い、その芽を大きく育ててほしい。優勝を目指してしのぎをけずるのも大事だが、各チームが地域のためになる取り組みの熱心さを競い合うこともまた大事なのである。

◎テロ新法案審議 会期内の採決が筋では

 福田康夫首相が民主党の小沢一郎代表ら与野党の党首と個別に会談し、新テロ対策特別 措置法案の成立に理解を求めたことは、法案を審議して採決するという国会の機能が半ばマヒ状態にある現状を打開するために手を尽くすということであり、密室談合批判は必ずしも当たらない。対テロ新法案に反対する各野党は、福田首相の協力要請を拒否したが、提出された法案の審議を十分行い、決められた会期内に採決をするのが国会の一つの原則であり、本来の姿であることを認識してほしい。

 与党は、野党が対テロ新法案の審議を引き延ばした場合に備えて、十二月十五日までの 国会会期を再び延長することも検討している。年末は例年、新年度予算案の編成が大詰めを迎える。国民生活にとって最も重要な予算編成に支障をきたすようなことはできる限り回避する必要はあるが、予算案づくりを並行して行うことができるのなら、会期再延長も選択肢の一つである。前例踏襲の手法が利かない衆参ねじれ国会であれば、年末年始にかかる異例の国会運営もやむを得ない。

 福田首相は、インド洋での給油活動再開について「国際社会の平和と安定、日本にとっ てのテロ対策として重要であり、日本が国際国家として生きていくための取り組みである」と説いている。首相のこの主張は理解できる。民主党は早期に航空自衛隊をイラクから撤退させるため、現行のイラク復興支援特別措置法を廃止する法案の審議を参院で優先させている。しかし、アフガニスタンでの対テロ活動からも、イラク復興支援活動からも手を引くという選択は、国際社会の主要国の一員として通用しないのではないか。

 日本がそうした道を選び、国際的な「テロとの戦い」や中東の安定、インド洋のシーレ ーンの安全確保といった活動に消極的な国と見なされたなら、国益が大きく損なわれるのは必至と思われる。

 与党は参院で対テロ新法案が否決された場合などに衆院で再議決することも視野に入れ ている。衆院の優位性を定めた憲法の原則に従って、衆院で再議決権を行使することは普通の政治手法であることを、あらためて強調しておきたい。


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