能登で唯一の救命救急センターに指定されている公立能登総合病院(七尾市)の常勤麻
酔科医が四月以降、不在となっている問題で、岡山、愛媛両大が医師派遣に協力する意向
であることが二十二日、分かった。来年四月をめどに数人が常勤する方向で、金沢周辺の
大学病院などに移送する場合が多かった夜間の重症患者にも対応できる体制が整う見通し
となった。
同病院は今年九月、元道後温泉病院理事長で元倉敷成人病センター理事の西江寛格(ひ
ろただ)氏(77)=岡山県高梁市=を「医師確保専任相談役」に迎えた。西江氏は出身
校である岡山大医学部と、愛媛大医学部に能登の医師不足の実情などを伝え、派遣交渉を
重ねている。西江氏によると、岡山大は国内最多級の麻酔科医を抱え、中国四国や関東、
関西の病院に多数の常勤麻酔科医を派遣している。
能登総合病院は今年三月末で常勤麻酔科医二人が退職し、その後は金大や金沢医科大の
医師が非常勤で対応している。夜間は不在となり、通常の手術は各医師が麻酔をかけて施
しているが、全身麻酔を要するリスクの高い患者や高度な専門的治療が必要な場合は対応
が困難な状態が続いている。七月には夜間に重症の虫垂炎を患った女児の手術ができず、
金沢市の石川県立中央病院に移送した。
医師一人当たりの負担などを考慮すると、麻酔科医は三人以上を確保するのが望ましい
とされ、今後、両大とさらに交渉を重ねる。川口光平病院事業管理者は「西江氏の尽力で
能登の地域医療の向上に明るい光が見えてきた」と話している。