2.研究
最新論文 「有機農業と循環型社会について」(『香川大学経済論叢』第80巻第3号)
経済学部教員組合が、学長交渉のためのアンケート調査をやったのだが、その結果が、組合員に知らされた。私も組合員だが、同時にオリーブの会にも入っているので、経済学部教員組合のアンケートには答えていない。
その質問項目のなかに、上記の件について聞いている項目があり、その結果は、圧倒的に反対意見ばかりであった。大学教員というのは、そもそも多様な存在であり、どんなアンケートをやっても、結果は分かれるものだが、これだけ圧倒的に反対意見ばかり(ほとんど全員反対といってもいい位である)というのはめずらしい。
同時に、この件について、大学の側の説明はどうであったかと質問しているのだが、これも、全員不十分であると答えている。
世間は、全員が反対であるような、そんなひどい改革をするのかと疑問に思うことだろう。逆に、教員が自分のエゴを守るために反対しているのだろうと思うかもしれない。これは違うな。
学類・学系という新しい組織は、いまの学部組織を上から(下からではない)編成し直し(だから、当然、経済学部とか法学部という組織は消えてしまう)、しかも、研究組織と教育組織を分離するものである。
時代が激しく動いているから、新しい組織で対応する以外にないというのが、学長サイドの意見だろうが、ここに飛躍がある。時代が激しく動いていることは事実だが、学類・学系という組織がそれに対応できるという保証は、何もないからだ。おそらく、多くの教員はかえってまずくなるに違いないと判断しているのだ。
むしろ、いまの組織の方が有効だろう、と。何故か。
大学という組織を動かしていくためには、最終的には、その組織に教員も学生もアイデンティティを持たないといけない。やるべきことを、機械的に義務的に決めているだけでは、本当に有意義に動くことはないのだ。
アイデンティティは急に育つものではない。そして、もう一つ大事なことは、アイデンティティが育つためには、それぞれが何からの形で結ばれていなければならない。われわれは学者であるから、その結ばれ方は、学問を通したものでなければならない。
学問のなかでも対立はいくらでもある。昔で言えば、近経とマル経の対立とかがあった。経営システム学科でいえば、経営と会計と商業の間では必ずしも仲はよくない。しかし、経営システム学科のなかで、お互いが不可欠な存在であるから、喧嘩はしても、最後は、学部や学科の利害を優先することになるのだ。
だから、そんなこともわかっていないのか!というのが、多くの教員の気持ちであろう。
地域社会システム学科のアイデンティティそれに、多くの教員は先行例がうまくいっていないことを知っている。ここが民間の企業とは違うところで、学者は学会を通して、横のつながりをもっている。私はまじめだから、つまらない報告だなあと思いながらも、報告を聞く方を優先しているが、学会では大体お茶の用意がしてあり、話すことができる部屋も用意されているから、そこで、昔からの友人とおしゃべりをしている人が結構多い。そういうアイデンティティ形成の難しさは、私が、地域社会システム学科を創り、その後、運営してきた人間だから、一番よくわかると言いたい。
経済学科とか経営システム学科なら、学問体系があって、それに応じて、教員が配置されているから、その科目が何故この学科にあるかなどという話をする必要はない。そういう出発点からいつも話を始めなければならないのが、この地域社会システム学科であった。
経済学部のなかに、(教育学部から15名ほどの人が移籍してきて)人文科学・社会科学の境界領域の学問分野を集める形で発足したのが、この学科である。だから、参加した多くの教員は、他の学科の教員ならやらなくてもよい努力を積み重ねてきた。それでも、教員も学生も、依然として学科としてのアイデンティティを十分持ち得ていない。じゃあ、何故そういう学科を創ったのだ!ということになる。「大学設置基準大綱化」という大きな流れのなかで、これを乗り切るためにあえて、小舟を漕ぎ出していったのが、私も含めた何人かであった。
それをやったが故に、工学部設置が順調に動くことになった。だから、大学全体としては大きな意味をもっていたはずであるが、その流れが終わると、いつの間にか、「お荷物」のような見方をされ、地域社会システム学科のポストを狙うという人達が登場することになった。
そうして、学科にあった「地域科学」という講座はなくなったし、それ以外の組織も、いまでは観光関係と国際社会文化関係に分かれてしまった。教育学部は、少し前「もう一度戻ってきませんか」と言ったくらいだから、教育学部までがこのポストを狙っていたということになる。われわれのメンバーの誰も同意しなかったから、実現しなかったが、本当にあさましい限りである。悪いのは、こういうように、ポストを狙われるような学科を創った俺なのか?? それなら聞きたい。地域社会システム学科のような存在を否定することは、結局、教養教育を否定していくことにつながっている。教養教育が大事だと思うなら、「大学設置基準大綱化」という(教養教育を否定することにつながっていった)路線を始めた人間の責任はどこにいったのか、と。
懇親会そんな場なら、大学内では話せない本音の話が聞ける。そういう場で、多くの教員は、すでに学類・学系という新しい組織がうまく機能していないことを聞いて知っているのだ。だからこそ、圧倒的な(いままでみたことがないほどの)反対意見が寄せられているのであろう。わが学会では、1日目に懇親会が用意される。経済学の主流の学会では、そういうことはないらしく、報告が山とあって、報告が終われば、それで終わりとなるらしい。
ところが、わがマルクス経済学関係の学会は、きちんと懇親会が用意されているのだ。もちろん自費での参加なのだが、多くの教員は参加するらしい。そこで、いろいろ情報を得てこようと思っているのだろう。学問は別とすると、わがマルクス経済学の教員はこういう横のつながりもあって、大学に戻ると学内政治では強いかもしれない。純粋に学問だけを考えている主流派は、なかなか権力を握れないということになるかもしれないなあ。
私は懇親会には出ない。2年に1回は東京近辺で学会があるし、いまや、自分の子どもはすべて東京近辺に住んでいるから、わが子と夕食会!! つまらない大学内の話より、そちらの方がいいに決まっている。