岡山県南でも街路樹の紅葉が見ごろになってきた。秋の深まりを感じさせるが、徳島県の山間部にある上勝町は、モミジや柿の葉などを売ってもうける町として知られる。
身近にいくらでもある葉っぱを、二十年前から料理に添える「つまもの」として販売。今では平均年齢七十歳、百九十戸の農家が年間三億円近く売り上げる。
年収一千万円を超すおばあちゃんもいる。「奇跡の葉っぱビジネス」と話題を呼び、人口二千人程度の町に年間四千人もの視察者が訪れる。Uターン・Iターンも増え始め、過疎に歯止めがかかった。
成功の陰には、やはりキーマンがいた。地元の農協職員としてユニークな商法を推進した横石知二さんだ。本人が最近出版した「そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生」には、過去の苦労と奇跡の足跡がつづられている。
最初は町内で誰も取り合ってくれなかった。それならば、と全国の料亭や旅館などを回り販売先を確保した。商売の面白さを実感させるため、農家ごとに日々の売上金を即座にパソコンで知らせた。「やる気を育て、その気にさせる」のが成功の秘けつという。
横石さんは全国の過疎地で「気の空洞化」が進んでいると懸念する。「何をやってもダメ」というあきらめムードだ。どうやって「やる気とその気」の再生を図るか。踏ん張りどころである。