May 30, 2007

単発SS-ぼくのきらいなうた。

「ぼくが歌うとおばあちゃんは怒るんだ」
必死に母に訴えた事があった。
その時は諌められ理解の無い母に不満を覚えた。


 ぼくらは家族で毎年の夏休みおばあちゃんの家に帰省する。
飛行機で片道数時間の道のりは小学生の僕には退屈で仕方がなかったが
大好きなおばあちゃんに会えると思うと少しだけ気分が良くなった。
「おばーちゃーん!」
「あら、誠大きくなったねぇ」
 地元特有の空気に包まれると狭いイスの事なんてすぐに忘れてしまう。
淡く染まった空と夕風、そして潮の匂いが暖かく緩やかに僕らを出迎える。
少し遅めの夕飯は豪華なお刺身、地元の親戚も集まって宴会が催されていた。
過疎化の所為か同じ歳くらいの子供は居らず大人が酒を飲み交わしているだけだった。
時が経つに連れて大人達の酔いが回ってくると下品な、いや人情溢れる大合唱が始まる。
 ちょっとだけ、仲間に入りたかった。
「ぼくも歌う!」
この地元の歌や流行の歌は全く知らなかったが、学校で習った歌があったのを思い出した。
「お!ほら歌えよ!」
「いやぁ、依子の息子も大きくなったもんだ」
「アンパンマンかぁ?ドラえもんかぁ?」
大人達が口々に素直すぎる感想を漏らしていく。
なんだかもう既に大人の仲間入りをしたかの様な錯覚に陥りながらも
学校で習ったスローペースな曲を、歌った。
 瞬間、誰もが目を逸らし俯き、語らずに箸を進め始めた。
母はすまなそうに親類に目をやっていた。
 ぼくはあせった。
自分の歌が下手だったのだろうか、それとも選曲のセンスが悪かったのだろうか。
なんで誰もぼくをみてくれないんだろうか、やっぱり子供がでしゃばるべきじゃなかったのか。
恥ずかしすぎて動けない。
――どうしようどうしようどうしようこまったこまったこまったこまったこまどしよう
顔が熱くなって涙が出そうになる。
あ、そうだ。
おばあちゃんに助けてもらえばいいんだ。
おばあちゃんなら大丈夫。
不思議な確信を持って振り返った。
薄く涙を浮かべたおばあちゃんがあった。
おばあちゃんは老人とは思えない力でぼくの襟首を掴むと玄関先までひっぱっていった。
「誠!あんな歌歌っちゃだめよ!」
その目は空より真摯で、その涙はおばあちゃんだけが流しているのではないように感じた。
あまりの剣幕で言われたからか、ぼくは素直に頷いて ごめんなさい と謝った。
その後の事はあまり詳しく覚えていない。
ただ帰りの飛行機でこのことを話したら母は寂しそうに、仕方が無いのよとだけ言った。
 おばあちゃんが死んだ知らせが届いたのは2年程経ってからだった。

 風が緩い、都会には潮の匂いは無い。
「まことー!そろそろ卒業式始まんぞー!」
「今行くわー」
三年間付き合った制服の襟首を直し、怠惰を共有した屋上に別れを告げる。
後ろ髪を引かれる思いで階段の下の友人の方へ足を労働させた。
「いやー、ついに義務教育終了だな!」
「何がそんなに嬉しいんだよ?」
「いやほら、なんか大人になったなぁって思わねぇ?」
「おもわねーよ、15そこらのガキが中卒になるだけの話だろ」
「ああ、ああはいはい、誠君は冷たいねぇ」
軽い笑顔を浮かべつつ僕らは整列して会場へ向かった。
春色の風が渡り廊下を潜り抜け卒業式を包む。
3月の中旬、中学校の卒業式。
今、やっとおばあちゃんが怒った理由を理解した。
母さんが寂しい顔をした理由も理解した。
やはりあの涙は一人だけのモノではなかった。
今年もまた、おばあちゃんに線香をあげに沖縄へ行こう。
 感傷の中、国歌斉唱が始まった。


May 26, 2007

【ゴロリの奇妙な冒険】

ゴロリの奇妙な冒険

atNHKスタジオ ゴロリの楽屋

「わかってるよ、わかってるって責任とるって な?いいだろ?
 え、は? 産むの? いやそれはダメでしょ。 だって
 ちょ、まてよ! おい! ゴラ!・・・・・・雌豚が・・・」

付き合って半年くらいになる女にガキが出来た。
ついついマイサンが苦しそうだったからムードンコに蓮コラみたいな細工をしたら
何故か、ガキが出来た。
所詮遊びの女だと割り切って10万ほど掴ませとけばいいかと思っていたゴロリにしてみれば
当人が産む気だというのは正に不意打ちというか画面端で二択だと思ったら何もしてこなかったようなものだった。
ギョロリと黒目オンリーの眼球を時計に向けるとかったるい撮影の時間が近づいてきていた。

「なーにがわくわくさんだよ・・割り箸で遊んでるだけじゃねーか・・・」

ゴロリさーん!お時間でーす!

やれやれと咥えていたタバコを揉み消しいつもの甘ったるい声で今行く旨を伝えた。




「あれれー?わくわくさーん今日は何を作るのぉ?」


 ゴロリ!今日はねぇ!割り箸ですごいものを作るよ!

「へぇ!何作るのわくわくさーん?」
(いっそコイツに割り箸マスターってあだ名でもつけてやろーか)

 ふふふーヒミツだよ! 観てればわかるよ

「もう!ちゃんと教えてよわりばs・・いやわくわくさーん!」
(おっとおっと・・・・)


いつものオーバーアクションで割り箸が原型を失っていくのを実況する。
この割り箸王はこの割り箸で世界の木がどんどん減っていくのを知らないのだろうか。
何楽しそうにポキポキやってんだ割り箸キング。

(ん・・・・?)

ふと机の上に違和感を覚えた、それは確実にスタジオ内に拡散していっていた。



わくわくさんが打ち合わせと違うモノを作っている。


打ち合わせでは割り箸鉄砲を作る手筈であったのに、既に数十本の割り箸を叩き割り
まったく違うモノになってきている。

様子がおかしいことに気づき始めたスタッフがカメラを止めわくわくさんの元に近寄る。
いや、近寄ろうとした。

瞬間目を疑った。

一瞬前まで居たはずのスタッフが消えている。
説明しづらいが 消えているのだ。
まるでそこに何もなかったかのように、空間のみを残し忽然とスタッフが消えている。

それをいつもの笑顔でわくわくさんは見つめて、 笑った。

それは聞いたことも無いような悪魔の哄笑。
人間はここまで残忍な笑い方ができるのか、少し感心してしまう。

 ヒャハ、ヒャヒャハハハハハハハ!!!!!!!!!!!
 みたかゴロリぃ!? 今日の創作は大成功だよ!!

空いた口が塞がらない、いつも塞いでいないが。

 ホラ!消えただろ!? な!? これが先代が残して行った最後のクリエイト!
 美しい!完璧な無!去り際に初めて喋ったってのもあながちわからなくもない!
 素晴らしい!ビューティフルッ!ワンダフルッ!そしてゴージャスッ!!!!

「ちょ、あんた何してんだ!!」

やっと舌が回った。

 あ? ゴロリぃ・・てめぇ俺に口答えすんのか?

悪魔、いや鬼の形相で俺を見つめるわくわく。
もうこいつ、人間じゃない。   俺もだったが。

「いや、おま、どうなってんだよ!」

 見てわかんねーのかゴロリィ!
 あのスタッフはな、転送されたんだよ!
 そう!このクリエイトこそ最終にして最高!至高の極み!
 転送装置WARIBASHI!
 こいつはモノにしてモノに非ず!クリエイターに寄生し!
 思うモノを思うトコロへ思うセカイへ運んでくれる!

狂ってやがる。
前々からあの笑顔の裏が怖かったが やっぱりまともじゃない。
しかも割り箸からあんなもんを作るなんてバカげてる。
バカげてるんだが・・・・今ソコにあるのは現実だとすると。
『ガチ』ってことらしい。

「・・・・で?どうしようってんだ?」

早く帰りたい。
もうあのガキ産んでいいよ マジで。
そんで幸せになるのもいいとおもうよ。
幸せにするよ、両親にも挨拶いくよ。
だからコイツをなんとかしてくれよ・・・・・

 ヒャヒャヒャ!決まってんだろ!!!
 この腐ったセカイから解脱!離脱!
 もしもボックスなんて非じゃねえ!コイツがあれば俺は神になれる!
 さぁ!ゴロリ!テメーも一緒に連れてってやる!

wkwkがワリバシだか何だかをこっちに向ける。
距離にして1メートルもない。

が。

止めようと腕を伸ばした時には既にwkwkがニヤケ顔を浮かべていた。










気づくと 知らない場所にいた。



見たこともないような文字で町は埋め尽くされ、人々が異様な格好で行きかっていた。



そこはエジプトだった。

ぷろふぃーる
右寺 りく
適等に適当なSSやら駄文やらなんやらを書いてみるテスツ。

右寺 (永遠の17歳)
二次しかダメ。マジで。
あずまんが大王の春日歩たん(大阪)に惚れている。
My status
かてごりー
あたらしい記事
<<  May,2007  >>
S M T W T F S
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
あるあさのたびだち
QRコード
QRコード
livedoor Readerに登録
RSS
livedoor Blog(ブログ)