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個と公 揺れる現場 教育基本法改正案 国会審議へ 「管理強化がこわい」 「軍国主義とは違う」
教育基本法の改正案が二十八日、閣議決定され、いよいよ国会で審議に入る。国や郷土を愛する態度の育成や公共の精神の尊重など、「個」から「公」へ軸足を置く内容に、現場の教師や父母からは「戦前の国家主義を思わせる」など不安や戸惑いの声が上がった。一方、「公の大切さを訴えるのは理解できる」と一定の評価をする意見も聞かれた。
「現行法は、平和教育や個人の尊厳を原点にした非の打ちどころのない内容。なぜ今改正なのか」。福岡県の小学校に勤める男性教諭(50)は疑問を投げかける。「『国を愛する態度』と表現は穏やかだが、『愛国心』を植え付けたいという狙いは明らか。学校現場では教師が自由にものを言えなくなっているが、ますます管理体制が強化される」と懸念する。
子どもの権利福岡研究会代表の八尋八郎弁護士(55)=福岡市=も「改正案は非行やいじめなど諸問題を解決する内容ではない」と批判。二〇〇二年に福岡市の小学校で問題になった通知表の愛国心評価に触れ「法改正によって通知表評価が再開される恐れがある」。熊本市の中学校教諭の男性(50)も「個人の価値観形成に国が踏み込む国家主義的なにおいがする」と危機感を募らせる。一方、福岡県飯塚市立「庄内生活体験学校」の生みの親で、子どもの生活改善の必要性を訴える東和大(福岡市)の正平辰男教授(66)は「戦前の『滅私奉公』への反省から戦後は(個人の権利を尊重し過ぎて)、いわば『滅公奉私』的状態になった。改正案が公の大切さを訴えているのはうなずける」と一定評価する。
福岡県久山町の元高校教師の男性(67)も「国と郷土を愛することは何も悪いことではない。戦前の軍国主義を支えた愛国心とは違う」という立場。子育てで保護者の責任を明記した「家庭教育」が改正案に盛り込まれたことも評価し、「今は親がわが子のしつけまで学校に押しつけている。学校は勉強する場所。改正が親の自覚を促すきっかけになってほしい」と要望した。
=2006/04/28付 西日本新聞夕刊=