しつけ・家庭教育に関する記事
「いじめ発生率」大きな開き/最多の愛知は福岡の10倍?/文科省調査に疑問の声/教委の実態把握に課題
日曜日(29日)の朝刊、読まれましたか? 子育て・教育関係の記事がたくさん載っていました。文部科学省の「いじめ発生率」調査に疑問の声…という教育面の記事。子どもたちに「本の世界が生きることを教えてくれる」と自宅を開放し児童文庫を運営している女性の話。経済面には「学習塾市場活況」のリポート。それぞれの記事から、大人は子どもにどう向き合ったらいいのかを考えさせられます。どの記事も「編集長おすすめ」にしたい…。そこで、1本ずつ、順番に紹介することにしました。まずは「いじめ発生率」大きな開き/最多の愛知は福岡の10倍?/文科省調査に疑問の声/教委の実態把握に課題 の記事から。
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北海道や福岡県などで起きたいじめ自殺を契機に、いじめ問題は政府の緊急テーマに急浮上したが、そのいじめの実態を反映すべき文部科学省の調査にあらためて疑問の声が上がっている。統計では近年、いじめは減少傾向にあるほか、「いじめの発生率」ともいえる児童生徒千人当たりのいじめ発生件数では、昨年度は最多の愛知県と最少の福島県で三十倍以上、福岡、佐賀両県と比較しても約十倍の開きがあるためだ。いじめをどう把握するか。都道府県教委に課題を投げ掛けている。 (編集委員・安元文人)
文科省は、いじめの定義を(1)自分より弱いものに一方的に(2)身体的、心理的な攻撃を継続的に加え(3)相手が深刻な苦痛を感じている−ものとしている。一九八六年、東京都で当時中二の鹿川裕史君が担任教師も加わった「葬式ごっこ」などのいじめを苦に自殺した事件を受けて、決めた。
さらに九四年、愛知県で当時中二の大河内清輝君がいじめを苦に自殺した事件後、文部省(当時)は、いじめの定義にあった「学校として事実関係を把握しているもの」とする文言を削除。子どもがいじめられたと認識して訴えれば、いじめと認めるよう、都道府県教委を通じて学校に対応の変化を求めた。
しかし、昨年度のいじめ発生件数は都道府県によってばらばら。小中高校生千人当たりでは、愛知県(実数二千五百九十七件)の三・四件が最多で、最少は福島県(同三十七件)の〇・一件だった。九州七県では長崎県(同二百七十八件)の一・六件が最も多く、福岡県(同百六十件)と佐賀県(同二十七件)はともに〇・三件だった。
ばらつきは毎年のことで「教師らの見えないところで、いじめが続いている可能性はあるが、実態は各学校が定期的に把握していると認識している」(佐賀県教委)と統計を肯定する考えの一方で、「必ずしも実態ではないのでは」(高知県教委)と、教委内にも疑問視する声がある。
愛知県教委は大河内君事件を契機に、国のいじめ定義を徹底。九六年に「小さなサインが見えますか」という教師用いじめ指導手引書を独自作成するなどして、担当者は「どんな小さないじめも見逃さない姿勢で取り組んでいる」と語る。
高知県教委は発生件数をいじめを早く解決するための「発見件数」とし、二〇〇四年度以降、教師に「子どもたちの心のサイン点検表」を配布。(1)生き生きしている(2)ひょうきん(3)素直(4)傷つきやすい−など子どもの日常把握を指導している。「素直な子」が実は「生き生きしていない」かもしれない。そんな気付きが大事だという。
追跡調査で、点検表を活用した学校ほど、いじめの報告が増えたという。担当者は「報告は不名誉ではない。教師の感度を高め、実態を知ることが大切。いじめ発見率を高めたい」と話す。
福岡県教委は森山良一教育長が「いじめ対策を見直す」と言明しており、九五年に作成した教師用「いじめ早期発見の手引」の練り直しも含め、検討中という。
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【写真説明1 】三輪中学校の正門横には、いじめなどがなく生徒が安心して学べる環境を訴える看板が置かれた=19日、福岡県筑前町
=06/10/29付西日本新聞朝刊=