レストランの格付けを表すことで知られるミシュランの星。
1900年にフランスで創刊されたミシュランガイドは、匿名調査員による公平なレストラン評で世界中の美食家たちの信頼を得ています。日本でも1つ星、2つ星、3つ星という言い方は有名でしょう。 一般客と同じように食事をして会計をする。100年以上も徹底して守られているミシュランの審査方法は、「その地を旅する人が快適なときを過ごせるように」という思いが込められています。 そして、ついに2008年11月22日、ミシュランガイド東京が出版されました! アジア上陸の第一歩に東京が選ばれたというのは、とても栄誉なことです。最高の3つ星は「そのために旅行する価値がある卓越した料理」を提供する店のことですが、東京版では8つの店が選ばれました。 その中の1つ、白金台にあるカンテサンスのランチをご紹介します。 ミシュランガイドでは、「現代風フランス料理」というジャンルで掲載されています。店内はセンスのいい男性の部屋を訪れたような落ち着いた空間。イタリア製レザー張りの椅子とソファーは座り心地がよく、落ち着いて食事ができます。 ランチは料理とデザートで7皿前後、食後の飲み物がついて7350円(税込)です。 カンテサンスの特徴は「おまかせの1コース」のみでメニューがないこと。予約するときに嫌いなもの、苦手なものを告げます。例えば、内臓系、羊肉、すっぽんなど。フレンチですっぽん!? と驚く方もいらっしゃるでしょうが、カンテサンスでは食材になることも。だから、少しでも食べられないと思う食材は遠慮をしないですべて告げます。 こうして、その日に仕入れた旬の素材を使い、1テーブルごとにメニューが構成されます。 食べていると、隣りのテーブルとメニューが違うということも。また、2度、3度と訪れるお客様には極力同じメニューは出さないという徹底ぶり。訪れるたびに新鮮な驚きがあるため、リピーターも多いそう。 私が訪れたのは2007年の5月。歩くと少し汗をかく陽気でした。最初に出されたスープは「冷たいガスパチョ スパイス・ペティヤン」。冷たくてとてもさわやかな味は、ひと口飲むとシュワシュワッと微(かす)かに炭酸を感じます。食欲を刺激するスタートに期待が高まります。 微炭酸のガスパチョ(撮影:金澤紀子) 続いてはシェフのスペシャリテ。「塩とオリーブ油が主役 山羊乳のヴァヴァロア」。山羊のチーズもミルクも苦手なので、普段なら絶対に食べない一品ですが、同行した友人に「おいしいから絶対に食べて!」と強く勧められ、予約時にメニューに加えてもらいました。 ひと口食べての感想は「本当にこれが山羊!?」。そう疑うほどクセがなくまろやか。とてもフレッシュで山羊独特の臭みがまったくありません。もしも、水牛だと嘘をつかれてもわからないほど(笑)。上質なオリーブオイルの香りと繊細な山羊のヴァヴァロアがよく合います。食べるたびになくなってしまうのが惜しいぐらいお気に入りの一品でした。 フレッシュな山羊乳のヴァヴァロア(撮影:金澤紀子) 3皿目は「ブルターニュから連想して 帆立貝と蕎麦の実」です。 身が厚く、大きな帆立はとても新鮮。中はほんのりレアになっています。添えられた蕎麦の実のプチプチした食感がおもしろく、それぞれの素材を引き立てています。フレンチだけど、和を感じる料理です。 肉厚な帆立貝はジューシー(撮影:金澤紀子) 4皿目は「石鯛のポアレ プールダルグのソース」。 魚の火入れが最高です。ふっくらとした白身は低温で繰り返しじっくり焼き上げるため。この火入れは岸田周三シェフが追求している料理法のひとつ。 パリ16区にある3つ星レストラン“アストランス”で修行を積み、「素材」、「火の入れ方」、「味付け」の3つに特にこだわっているそうです。片時も目を離さずに火加減を調整するからこそ、この魚の味が表現できるのでしょうね。 白身がふっくらした石鯛(撮影:金澤紀子) 5皿目は「短角牛のロースト ソースカプシーヌ」。 あまりにもレアな肉は苦手なのですが、こちらもひと口食べて驚きました。肉の臭みがまったくありません。とても新鮮で柔らかく、添えてある塩をつけるとほのかに肉の甘みを感じます。低温でじっくり焼き上げるのは素材の旨みを閉じ込めるためなのですね。 また、付け合せのシイタケやジャガイモ「インカの目覚め」も濃厚な味で食べるたびに「おいしい!」とため息がもれてしまいます。 極限まで素材の旨みを引き出す料理法を岸田シェフは熟知しています。 低温で焼き上げた牛肉(撮影:金澤紀子) そしてそして。うれしいことにデザートは2皿出てきます。1皿目は「ガトーニュージーランド ソースキウイ」。 さっぱりしたヨーグルトムースの上には薄くスライスしたリンゴ。その上にキウイソースがかかっています。口溶けのいいムースはさっぱりした甘さ。肉料理を食べた後にぴったりです。 デザート1皿目(撮影:金澤紀子) デザート2皿目(撮影:金澤紀子) デザート2皿目は「イチヂクのキャラメリゼ ソース・ヴァンルージュ」。 大きなイチヂクはふっくらとして、柔らかな食感。見た目にはわからないけど、デザートにもサプライズが。コーヒーがかかっているので、食べるとほのかにコーヒーの香りがします。添えてあるソースをつけるとさらに味に奥行きがでます。 何を食べてもおいしさと驚きの連続で幸せな時間を過ごせました。 フレンチというと食べた後に重いと思ったり、ときには胸焼けすることもありますが、カンテサンスの料理はとても軽やか。 でも、すべてが印象深く、味わいがあります。フレンチを毛嫌いしている方にこそ、ぜひ食べてほしいですね。 サービスもさりげなく、押し付けがましいところがありません。ひとりで来ている男性客がワインと共にランチを楽しんでいる姿も見かけました。居心地がいいからできることですよね。 帰りは、どんなに混んでいても岸田シェフがあいさつに来られます。そして、ドアの外まで丁寧にお見送り。料理だけではなく、来る方すべてに愛情を持って接している姿がすばらしい。帰り際に次の予約を入れるお客様が多いのもうなづけます。 ランチでこれだけ感動するのだから、ディナーはもっと素敵なのでしょうね。 とはいえ、庶民にはなかなか手の出ない価格です。いつか何かの記念日に行ってみたいものです。 今からカンテサンス貯金をしなくては!
総合8点(計3人)
※評価結果は定期的に反映されます。
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