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【社会】

ATM盗撮 被害1億円 2人再逮捕 5中国人に逮捕状

2007年11月22日 朝刊

犯行グループが、金融機関のATMコーナーに設置したビデオカメラや、カメラケース

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 現金自動預払機(ATM)に盗撮用カメラを設置したり、偽造カードで現金を不正に引き出したりしたとして、埼玉、静岡、群馬、栃木、愛媛の五県警の合同捜査本部は二十一日、建造物侵入の疑いで東京都板橋区南町、無職佐々木宏一被告(39)を、窃盗などの疑いで弟の千葉県船橋市本中山四、同佐々木良二被告(34)=ともに別の窃盗罪などで起訴=をそれぞれ再逮捕。背後にいる犯罪グループが二〇〇五年十二月から今夏までに全国の地方銀行などで盗撮を繰り返し、被害総額は約一億一千万円に上っていることが判明した。

 両容疑者は、中国残留孤児二世。合同捜査本部は、犯行を指示したとされる中国人の無職の男(32)ら同国人の男五人についても、窃盗容疑などで逮捕状を取り、行方を追っている。

 埼玉県警が今年五月、埼玉縣信用金庫でのカード盗撮事件に絡み、窃盗などの疑いで中国人の男五人を逮捕。

 供述などから指示役の無職の男や、佐々木容疑者らのグループが浮かんだ。

 合同捜査本部は無職男の背後に、中国人のボス格の男がいるとみている。

数万人分カード画像 首都圏に偽造工場?

 合同捜査本部が押収したパソコンやビデオ画像などの解析では、ATM盗撮グループが撮影したカードは数万人分に上った。グループは被害が発生した地方銀行だけでなく、複数の都市銀行などのATMコーナーにカメラを設置していた。

 合同捜査本部などによると、グループはまずスーパーなどにあるATMコーナーの天井に、カメラケースに隠したビデオカメラ二台を設置。カード挿入口やタッチパネルを撮影し、口座番号と暗証番号を入手する。さらに、撮影した画像が不鮮明な場合に備えて、利用明細書も盗んでいた。

 盗撮情報は、首都圏にあるとみられる「偽造カード工場」に持ち込まれる。カード偽造には口座番号や金融機関番号など以外に、カードの磁気に記録されている数十けたの独自番号が必要とされるが、グループは、車上狙いなどで盗んだカードから割り出した独自番号と、盗撮した口座番号などを組み合わせて偽造カードを作製していた。

 数万人分のカードの盗撮画像が見つかったが、都市銀行などの分は、独自番号が解読できず失敗したらしい。

 カード盗撮は二〇〇五年九月にUFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)で初めて確認された。全国銀行協会は金融機関に警戒を呼び掛けているが、被害は後を絶たない。

 宏一容疑者らのグループに、約四千万円を引き出された群馬銀行の広報室は「スーパーなどでは行員の目が届かず、盗撮カメラの点検は外部に委ねざるをえない」と悩ましさを明かす。JAが被害を受けた農林中央金庫広報部は「磁気カードの情報量を増やして偽造防止に努めているが、都銀に比べて対応が遅れており、古いキャッシュカードのままの人が多かったため被害が出たのでは」と分析している。

 埼玉県警幹部は「スーパーなどのカメラの点検を徹底し、利用者も利用明細書を持ち帰るなどの注意を払ってほしい」と呼び掛けている。

 

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