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【社会】

安易な119番「断る」 名古屋市、来年度から

2007年11月22日 朝刊

 安易な119番通報が増加し、各自治体が「救急車の適正な利用」を市民にどう呼びかけるか頭を悩ませている中、名古屋市は来年4月から、緊急性がないと消防局が判断した場合は、出動を拒否する方針を固めた。

 合わせて「拒否」の判断が正しかったのか、逆に出動の必要が本当にあったのか、事後に検証する仕組みも来年4月から、全国で初めて導入する。医療機関との協議を21日から始めた。

 市と市民側、どちらからでも疑問が生じた場合、まずは局内で調査し、さらに必要に応じ、地元の医師会や病院協会も交えて2次調査を実施。判断の適否を確認し、その後の対応に生かす。

 市は出動の判断に関するガイドラインを作成し、まずは医療機関からの依頼に基づく患者の病院搬送に限って先行的に実施し、徐々に対象を広げる計画。119番通報を受けて、患者の容体や、救急車以外に代替手段がないかなどを聞き取り、その都度、判断する。

 救急車の出動件数は年々右肩上がり。市内では昨年、10年前の倍近い10万610件に上り、ほぼ5分に1度、出動した計算。「2割程度が緊急性や必要性がなかった」(市救急対策室)とされる。

 神戸市は2年前から、横浜市は昨年から、同じように、不適正な出動要請を拒否している。

◆「尿の出が悪い」「歯が痛い」など

 「朝から尿意を感じるがどうも出が悪い」。高齢者からの通報で救急隊が駆け付けると、通報者は自力で歩けるし、おまけに家族も自宅にいて自家用車もあった。隊員はあきれながらも救急車で搬送−。名古屋市内で昨年、実際にあった例だ。

 拒否する規定がないため、相手が求めれば搬送せざるを得ないのが実情という。

 ほかにも「歯が痛い」の通報で救急車が駆け付けてみたら「実は入れ歯のかみ合わせが悪くて…」。悪質なケースでは「体調が悪い」との通報で出動し、よくよく聞いてみると、当日は検査の予約日で「救急車なら、予約時間より早く診てもらえるかなと思って」という事例も。

 さらに警察からの通報で、交通事故発生からは1時間以上が過ぎ、実況見分を終えた後に「救急車でも呼んであげようか」と、消防局からすると全く緊急性がないケースもあるという。

 「これでは、一分一秒を争う、本当に救急車が必要な人への対応に支障が出る可能性もある」と市救急対策室。市は、緊急性を要しない人に向けて、子どもの病気に関する電話相談や、患者搬送用の車を保有するタクシー会社の連絡先などを一覧にしたチラシを作成し、近く市民に配布する考え。

 

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