文部科学省が15日公表した児童生徒の問題行動調査で約12万5000件のいじめが確認された。1月にいじめの定義を見直し後、初めての調査結果だが、九州各県では1000人当たりの件数で大きな開きも生じ、関係者の間では「実態が反映されているとはいえない」と懐疑的な声も聞かれた。

 1000人当たり50.3件で全国最多となった熊本県。昨年秋、同省に届いたいじめ自殺予告のはがきに熊本の消印が押されていたため、県教委が全児童生徒対象の緊急アンケートを実施。「いじめられたことがある」の回答は約15%(約3万700人)に上り、精査後、同省に報告した。

 担当者は「意見を広く吸い上げて対応できたという意味では良かった」と強調する。

 一方、佐賀県は3.5件で、九州・山口では福岡県と並んで最も少なかったが、県教委は「見落としがあり、苦しんでいる子がいるのではないかと教職員は受け止めてほしい」とする。

 「こんな調査ならまた子どもが自殺してしまう」と落胆するのは、いじめ問題に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の小森美登里理事。同法人が小中高校36校の約1万3000人を対象にしたアンケートでは、小学生の44.1%、中学生の25.0%、高校生の30.5%が「いじめられたことがある」と答えた。

 対して今回は1校平均3・1件で半数近い学校がゼロと回答。「解決済み」は全体の8割で、小森理事は「正直に報告した教諭の評価が下がるような現状があるのでは。それを改めないと対策は取れない」と言い切る。

 中学2年の娘が部活で仲間外れにされて一時、不登校になった福岡県内の母親(45)も疑問を抱く。娘の件では顧問教師に相談したが、生徒同士で話し合わせただけで「臭い物にふたをするような対応」に終始したという。母親は「報告されないケースはもっと多いはず」と指摘する。

 逆に「ささいなトラブルにも現場が過敏に反応する傾向が出そう」と心配するのは北九州市の男性小学教諭(48)。「子どもに必要な体験まで摘んでしまわないような対応も必要」と話した。

 パソコンや携帯電話を使ったいじめは全国で5000件近くに上り、九州工業大の西野和典准教授(情報教育)は「機器を使わせないのではなく、正しく使いこなす教育が必要」と訴えた。

=2007/11/16付 西日本新聞朝刊=