◎金沢港の工業集積 さらに有効利用を図りたい
コマツが「金沢第二工場」の建設を決めたことで金沢港周辺の工業集積に期待が高まっ
ているが、石川県や金沢市はこれを契機に金沢港振興や関連企業の誘致、配置などに効果的に結びつけるよう努力してもらいたい。
水深十三メートルに整備する計画の金沢港大浜地区の岸壁は来年秋、水深十二メートル
で暫定供用を開始し、三万トン級の大型貨物船の入港が可能になる。コマツが大型プレス機械の工場に続き、鉱山用の超大型油圧ショベルの工場建設を決断したのは、資源開発が世界的に活発化し関連機械の需要拡大が見込まれることや、優秀な協力企業の集団が県内に存在することに加え、大水深岸壁で機能強化が図られる金沢港の利便性をフルに生かす戦略からにほかならない。
県、金沢市にとっての喫緊の課題は、金沢港の能力アップに見合った取扱貨物量を確保
し、国際航路の拡充などを図ることであり、コマツの金沢工場はその一里塚ともいえる。港湾の貨物量が増えれば、国際航路の拡充や大型船就航につながり、企業立地もしやすくなる。こうした好循環をつくり出していくことが重要なのであり、コマツの工場建設をそのテコにしてもらいたい。
金沢港の国際航路は現在、韓国釜山航路が週三便、上海などの中国航路が週二便、北米
航路が月一便という状況で、貨物量は比較的順調に増えている。〇六年度は前年比5%増の三百九十四万トンに上るが、伏木富山港や新潟港には大きく水をあけられている。貨物量の増加をコマツの製品輸出だけに頼っていられないことはいうまでもなく、いわゆる港湾活用型企業をもっともっと取り込んでいく必要がある。
北陸地方整備局は先ごろ、北陸の港湾の輸出入コンテナ貨物量の需要予測をまとめた。
それによると、北陸と群馬、岐阜など隣接県の需要が拡大した場合は四・七倍に、また北陸の港湾活用型企業がすべて地元の港湾を利用した場合は二・二倍に伸びると試算している。
県や金沢市などはこれまで、県内や隣県の荷主企業をリストアップして積極的なポート
セールスに努めているが、大水深岸壁の整備とコマツの工場建設を追い風に、金沢港の活用を推進する取り組みをさらに強化してもらいたい。
◎改正入管法施行 地域の治安向上にも効果
改正入国管理・難民認定法に基づき、十六歳以上の外国人に入国審査で指紋採取と顔写
真の撮影を義務づける新制度がスタートし、石川県、富山県の空港や港でも審査が始まった。「プライバシーの侵害」などととらえる向きもあるが、北陸各地でも外国人による犯罪が後を絶たない現状を見れば、新制度による入管審査を徹底することで、地域の治安向上にもつながるようにしたい。
改正入管法は、これまで空港などの審査窓口で、出入国カードと旅券のチェックだけで
入国を認めていたが、カメラ付きの読み取り機に両手の人さし指をかざし、指紋採取と顔写真の撮影が求められる。米国に続き二番目の導入となり、国際指名手配犯や不法滞在などで強制退去となった外国人のリストと照合し、該当した場合や、審査を拒否した場合は入国が認められない。
新制度はテロリストの入国阻止が主眼であるが、来日外国人による犯罪も深刻化する中
で、犯罪の芽を水際で摘むことは地域の切実な思いであろう。
昨年の来日外国人による犯罪は、石川県では摘発件数が二百七十九件で前年のほぼ倍に
達した。富山県では摘発件数は減少しているものの、ロシア人らによる高級車窃盗事件で、窃盗団メンバーが偽名の旅券を使って再入国していたことが明らかになった人物もいる。
警察庁によると、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した外国人容疑者は、昨年末現在で六百
五十六人で、十年前の三倍になった。先のロシア人窃盗グループのケースのように、一定期間、海外で身を潜め、再入国をはかる犯罪者がいる可能性もありうる。こうしたケースを阻止する意味でも、導入された生体識別(バイオメトリクス)検査は有効だ。
新制度は当初、機器類の不具合もあって若干混乱したようだが、過去に強制退去になっ
て来日が許されていないケースが見つかり、退去命令が出される見通しとなった。日本で犯罪を犯しながら、やすやすと出入国を繰り返すことができるような入管体制を無くすことは、安心して旅行に行ける国として日本の評価を高めることにもなろう。制度の厳格な運用によって定着させたい。