不発弾が多く紛争解決後も民間人を無差別に死傷させるクラスター(集束)弾を規制するためジュネーブで開かれていた特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議は、二〇〇八年から政府専門家会合で規制内容について協議を始めることで合意した。
本来この会議は、欧州連合(EU)が「使用、生産、移転、備蓄を禁じる法的文書」の締結交渉を〇八年末までに完了させることを提案して開かれた。しかし合意にはクラスター弾の使用や製造の禁止を促す文言はなく、交渉期限も明示されなかった。結果は極めて不満足なものと言わねばならない。
専門家会合は〇八年一月の第一回を皮切りに三回以上、合計七週間以内の会議を開き、十一月に進展状況を報告するとしている。百カ国以上が参加するCCW加盟国の中で、厳しい規制に消極的なロシアや中国、インドなどを今後どうまとめていくのか、全会一致が原則だけに、延々と交渉が長引く可能性も指摘されている。
クラスター弾による悲惨な被害者を出さないためには、早期の禁止条約の成立しかない。交渉はCCWとは別に、ノルウェー政府が呼び掛けた「オスロ・プロセス」の動きが期待できる。
今年二月にオスロで会議を開き、〇八年末までに禁止条約制定を目指す「オスロ宣言」を採択した。しかし日本は米国やロシアなど大量保有国が参加するCCWの枠組みでの条約交渉を重視し、宣言参加は留保したままだ。米国、中国、ロシアなどが参加しないのでは、効果が乏しいと考えているのだろう。専守防衛兵器として自衛隊が保有していることも足かせになっているとみられる。
オスロ・プロセスでも乗り越えるべき課題は多い。五月にペルーで開かれた国際会議では、全面禁止を訴える議長国とクラスター弾の定義を設けて禁止対象から除外しようとする英国やドイツの動きもあった。
大切なことは非人道的な兵器をなくしたいという世界の人々の声である。対人地雷禁止条約(オタワ条約)は一九九七年、廃絶を求める世界的な世論の盛り上がりの中で調印された。日本も政治決断で条約を批准し、保有していた大量の対人地雷を廃棄した実績がある。
オスロ・プロセスとCCWとどちらが廃絶に向けた道筋を付けられるかは未知数だ。しかし軍縮を重視する日本としては、全面禁止の姿勢を鮮明に打ち出し、オスロ・プロセスにも積極的に参加すべきであろう。
十六歳以上の外国人を対象に入国審査で指紋採取と顔写真撮影に応じることを義務付ける改正入管難民法が施行され、全国二十七の空港と百二十六の港で運用が始まった。
入国時の生体情報採取は米国に次いで二番目だ。政府はテロ対策を理由に挙げる。確かに別人になりすましたテロリストなどの不法入国者の阻止に効果はあろう。だが、犯罪に無関係な観光客に不快感を与え、採取した指紋は警察など捜査機関も利用可能な点など問題が少なくない。慎重な運用が欠かせない。
改正法は米中枢同時テロをきっかけに、政府が策定した「テロの未然防止に関する行動計画」に基づき、昨年五月に成立。在日韓国・朝鮮人ら特別永住者や外交官、国の招待者などは除外される。得られた生体情報は過去に強制退去処分を受けた外国人のほか国際刑事警察機構(ICPO)や日本の警察による指名手配など計八十万―九十万件の生体情報データベースと照合。問題があれば強制退去処分や警察に通報される。
生体情報の目的外利用は慎重に判断、必要最小限にすることは言うまでもない。とくに警察が一般事件の捜査に関係して指紋の照合を求めることが常態化するのは問題だ。日本弁護士連合会は「犯罪捜査に際限なく利用される恐れがある」と懸念している。
二〇〇四年に始動した米国では一億件の指紋データを取得、連邦捜査局(FBI)などが共有するまでになった。だが、米議会の付属機関「政府監査院」は「セキュリティー管理が脆(ぜい)弱だ。権限を持たない人間が個人情報を閲覧したり削除することが可能だ」と指摘する。そう言われないよう日本は今から情報管理を徹底しなければならない。
(2007年11月21日掲載)