鈴木 井上さんのお店のお客様は、やはり女性が多いのでしょうね。男性客の比率はどれくらいですか。
井上 だいたい2割ほどです。しかし、最近は男性のお客様も増えていて、品川駅の中にある店などは、時間帯によっては4割くらいになることもあります。
鈴木 男性の中には、フラワーショップに入って花を買うのは抵抗があるという方も多いと思いますが、意外と男性客の比率は高いのですね。
井上 おっしゃる通り、花を買うのに抵抗があるという男性のお客様は多いですね。その抵抗感の中身を分析してみますと、一つには、花屋にいる姿を見られるのが恥ずかしいということがあります。ですから、私どもでは、予めアレンジした商品をご用意して、待たずにお買い求めいただけるようにしています。また、花を持って歩くのが恥ずかしいという方もいらっしゃいますから、持ち歩く時に外から花とわからないボックスもご用意しています。ボックスタイプの入れ物をご用意してから、花を買っていかれる男性がずいぶん増えました。
鈴木 それも、まさにお客様の立場に立った発想です。きめ細かな対応を図っていくことで、まだまだ新しい市場を開拓できる可能性があるということですね。私たちは今、店づくりにおいて、地域性や立地環境に合わせた個店ごとの品揃えや売場構成を追求しています。消費飽和になるほど、お客様は地域の商品を見直すようになってきました。かつて、チェーンストアといえば、全店一律の品揃えでしたが、それにとらわれず1店1店がきめ細かく地域のニーズに対応していくことが重要だと考えています。
井上 私どもの同じ渋谷にある2店舗でみても、駅の中の店舗と、そこからそれほど離れていない住宅地に近い百貨店の中の店舗では、客層も売れ筋もまったく違います。そう
いう点を見逃さずに対応していくことが大切ですね。
そのためにも、それぞれの店の特性に合わせて仕入れも発注も個店の権限で行っています。
鈴木さんのお話をうかがっていると、改革すべきテーマはいくらでもあるということがよくわかります。セブン&アイHLDGS.の場合は、これまで本当に改革の連続で、それを実行し続けていらっしゃることにたいへん感動しています。
鈴木 私どもは1982年から、それまでの仕事の仕方を大きく変えていくために、原則として毎週1回業務改革委員会を開催してきましたが、この10月にはそれが1000回を超えました。これからもお客様のニーズはどんどん変化していますから、それに応えていくには改革に終わりはないと考えています。
今日は、井上さんの失敗を恐れずにチャレンジし続けるというお話をうかがい、改めて改革し続けることの大切さを感じました。お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。