日経情報ストラテジー発ニュース

ゼネコン発ベンチャーが小口修繕サービスで成長

携帯電話をフル活用して生産性向上

 公共土木工事の実績で知られる前田建設工業の社内ベンチャーとしてスタートし、家屋や店舗などの施設メンテナンスを手がける「なおしや又兵衛」が、IT(情報技術)を活用しつつ順調に事業を拡大している。

 同事業は「扉の調子が悪い」「水漏れがする」といった細かな修繕の依頼を24時間年中無休のコールセンターで受け付けて、作業担当者を派遣するもの。前田建設工業の社内ベンチャーとしてスタートしたのは1999年で、2007年4月に同社の100%子会社であるJM(東京都千代田区)として分社した。サービス名は、前田建設工業の創業者である前田又兵衛氏の名前から取った。

 売り上げは毎年2ケタの成長を続けており、分社直前の2007年3月期で同事業の売上高は約70億円、経常利益は約6000万円に達した。従業員数は143人(2007年4月現在)で、作業員を派遣するサービス拠点は札幌から福岡まで14(サテライトを除く)ある。

 なおしや又兵衛は、営業担当者を置かない受注体制や、作業管理にITを活用する仕組みが特徴。基本的に修繕やリフォームは、コールセンターで受注する。一般家屋を修繕する場合の価格体系はウェブサイトで明示している。同事業ではセブン-イレブン・ジャパンやユニクロといった法人からも店舗メンテナンスを請け負っているが、これらの各店舗からもコールセンターで依頼を受けている。

 属人的な作業体制や強引な営業活動などで問題を起こすケースも少なくない修繕やリフォーム業界にあって、価格体系を事前に明示することや、「自動ドアが閉まらなくなった」「タイルが割れた」といった小売店舗の細かなトラブルにもきめ細かく対応することによって、訪問営業をせずに引き合いを伸ばしてきた。

図版

「なおしや又兵衛」事業を展開するJMの大竹弘孝社長

 「この事業は労働集約型の業態なのでITで生産性を高める方策を追求してきた」とJMの大竹弘孝社長は言う。

 同社が生産性向上のため活用しているのが、「Handy Buz」という携帯電話を使った作業管理システム。依頼元に到着した作業担当者は携帯電話で作業内容を入力するとともに、内蔵カメラで修繕前の損傷状況や修繕後の状況を撮影し、即時に送信。これによって作業の着手や進捗状況を管理する。チェーン店舗の場合はこれら修繕データを集計・分析することでチェーン本部への改善提案にも生かしている。この仕組みのためにJMは前田建設の社内ベンチャー時代から通算すると十数億円ものIT投資を実行したという。

 JMの大竹社長は、修繕・リフォーム事業で蓄積した経験やデータを生かし、今後は建物の設計・計画を支援するサービスも伸ばす考えだ。

(清嶋 直樹=日経情報ストラテジー

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