次期改定めぐり診療、支払側が意見

 中央社会保険医療協議会(中医協、会長=土田武史・早稲田大商学部教授)は11月21日、総会を開き、診療、支払側が2008年に実施する診療報酬改定に対する考え方を出しあった。医科、歯科、調剤における報酬の大幅引き上げを主張する診療側に対し、支払側は「診療報酬を引き上げる環境にはない」と応じた。次の総会で次回改定に対する中医協としての意見をまとめる。

 診療側はこの日、長年にわたる医療費抑制策によって、医療機関の倒産件数が過去最悪の水準で推移するなど地域の医療提供体制が崩壊の危機に直面しているとの見方を示した。
 国民が望む医療提供体制の維持・発展は、医療機関の安定した経営基盤があってはじめて成立できるとし、来年の診療報酬改定での「大幅な引き上げ」を強く要望した。

 医科については、TKC全国会から資料提供を受けて日本医師会が実施した「TKC医業経営指標」から、経営の安定性を示す医療機関の損益分岐点比率が危険水域とされる90%台に突入していることが明らかになった点を指摘。地域医療の崩壊を食い止め、医療の質を確保するためには医科の部分だけで5.7%の引き上げが必要と主張した。
 特に病院については医療崩壊が「現在進行中」とし、危機的な状況を打開するには「大幅な引き上げ以外は不可能」とした。

 一方、歯科診療報酬については、06年に1.5%引き下げられた結果、過度な経営効率化が求められている状況を指摘。その上で、安全や質の確保、後期高齢者歯科医療の拡充などの費用を積み上げた場合、歯科医療費ベースで5.9%以上の引き上げが必要との見方を示した。また調剤報酬については、安全確保に支障をきたさないためには「これ以上の引き下げは回避しなければならない」とし、次の改定での適切かつ必要な財源確保を求めた。

 これに対して支払側は、わが国の経済が徐々に上向きつつあるとする一方、国民の多くは経済の回復を実感するに至っておらず、医療費に対する負担感が高まっているとし、08年の改定では診療報酬を引き上げる環境にはないと指摘。社会問題化している病院勤務医の疲弊や産科・小児科の医師不足などの課題には医療財源の適切な配分により対応するよう求めた。
 薬価についても「適正化」を求める一方、革新的な新薬の開発などは「適切に評価」するよう求めた。

 勝村久司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、病院と診療所の経営状況に格差が生じている点を指摘。医科診療報酬を一律5.7%引き上げた場合、「格差がますます広がるのではないか」と指摘した。

 土田会長は「各側から意見を聞いたので、次の総会で大臣に提出する意見を提案するのでご審議いただきたい」と述べた。


更新:2007/11/21   キャリアブレイン

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