2007年11月21日 更新

“神の子”に最高のご褒美!マー君、高卒ルーキー3人目新人王

清原、松坂に肩を並べた田中は、電光掲示板の前で2年目の飛躍も誓った(撮影・浅野直哉)

清原、松坂に肩を並べた田中は、電光掲示板の前で2年目の飛躍も誓った(撮影・浅野直哉)

 20日に行われたプロ野球コンベンションで、楽天・田中将大投手(19)が、パ・リーグの最優秀新人に選出された。パの高卒ルーキーでは清原(オリックス)、松坂(レッドソックス)以来3人目の快挙。

 生涯で一度きりのチャンスを逃さなかった。パ・リーグ新人王は文句なしで田中。高卒ルーキーの新人王は、ドラフト制導入以降では86年清原、99年松坂に続く史上3人目の快挙だ。

 「野球人生で、新人王というのは一生に一度。すごい賞をいただいたと思う。うれしい気持ちでいっぱいです」

 プロとして獲得した最初のタイトルを、田中は素直に喜んだ。同じ11勝を挙げた西武・岸と一騎打ちの争いが予想されたが、得票数は163対5の圧勝。野村監督から“神の子”と呼ばれ高卒新人歴代4位タイの196奪三振を記録するなど、存在感は際立っていた。

 全力で駆け抜けた1年目。決して楽な道のりではなかった。「肉体的にも精神的にもつらい時期があった」。疲れが蓄積しだした5月過ぎには、すねの内側が痛むシンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)に悩まされた。

 後半戦も10勝目、11勝目を目前にして足踏み。1カ月近く白星から遠ざかり、「早く勝ちたい。早く投げたい」と気持ちばかりが先走った。苦しみながらも、チームでただ一人先発ローテを守り抜いた田中にとって、新人王は何よりのごほうびといえるだろう。

 飛躍が期待される2年目に向け、カンフル剤となりそうなのが、19日の大学生・社会人ドラフトで交渉権を獲得した長谷部(愛工大)の存在だ。「ビッグ3といわれていましたからね。注目もされるし、注目されれば、もっと頑張ろうという気持ちになる」。年齢こそ下だが、プロの先輩として負けたくない気持ちが芽生えている。

 今オフは、年俸も1500万円から3倍強の5000万円前後にアップされることが予想される。昨年、ともに甲子園を沸かせた早大・斎藤佑樹投手にもプロの魅力を示すことができた。

 「来季? 任された試合を勝ちにつなげて、終わってみたら今年の成績を抜いていたい」。来季は悲願のAクラス入りがかかるが、田中の右腕は欠かせない。新人王の勲章は、マー君をもうひと回り成長させるはずだ。

(越智健一)

★田中に聞く

−−新人王となった率直な感想は

 「野球人生で、新人王は一生に一度。すごい賞をいただいたと思う。うれしい気持ちでいっぱいです」

−−高卒では清原、松坂に次いで3人目

 「実力で並んだとは思っていません。まだ先は長いし、もっと上を目指してやっていきたい」

−−プロに入ったときに新人王をとれると思ったか

 「シーズン当初はまず1勝が目標。新人王は考えてもみなかった」

−−プロでやれるという手応えをつかんだのは

 「3試合目の西武戦です。それまで小さくまとまろうとしていたのが、気持ちを前に出していく自分の投球ができた。自分の中でやれるという手応えをつかんだ、ひとつの分岐点でした」

−−来季はどんな投球をしたいか

 「今季の11勝も、チームの先輩のおかげ。打線に助けられたのがほとんどでした。来年は最少失点で抑える投球で、打線を楽にしたい」

−−チームのAクラス入りにはどんな成績が必要か

 「今季は後半もたついて、もう少し勝てたという気持ちもあるし、防御率も満足していない。四球の数もワーストでしたから。来季は任された試合を勝ちにつなげて、終わってみたら今年の成績を抜いていたい」

■田中 将大(たなか・まさひろ)

 1988(昭和63)年11月1日、兵庫県生まれ、19歳。駒大苫小牧高では2年夏に全国制覇し、昨夏は早実・斎藤(現早大)と投げ合い、決勝再試合の末、準優勝。07年高校生ドラフト1巡目で楽天入団。今季は6月13日の中日戦(フルスタ宮城)でプロ初完封を挙げるなど、28試合に登板し、11勝7敗0S、防御率3.82。1メートル86、87キロ。右投げ右打ち。独身。今季年俸1500万円。背番号18。

■データBox

 パ・リーグ新人王は楽天・田中。球団としては創設3年目で初めて。ドラフト制後(66年以降)入団の高卒ルーキーの受賞は66年巨人・堀内恒夫(投手)、86年西武・清原和博(内野手)、88年中日・立浪和義(同)、99年西武・松坂大輔(投手)に次いで5人目。

★マー君オフも精力的「ゴルフやりたい」

 田中は現在、福岡市内に滞在し、朝井、永井らとともにオーバーホール中。とはいえ、「秋季キャンプをいい感じで終えられたので、しっかり体を動かしたい」と完全に体は休めずにトレーニングも続けている。オフの間もイベントなどで多忙だが、「(野村)監督にもやれといわれているので、ゴルフもやりたい」と精力的に動き回る予定だ。

◆新人王に輝いた田中について北京五輪日本代表・大野投手コーチ

「今回は代表に選ばれなかったけど、来年の本番では選ばれるように頑張ってほしい」

高卒新人投手の新人王
年度選手(所属)成績
1953権藤 正利(洋松)15勝12敗 防2.77
1954宅和 本司(南海)26勝9敗 防1.58
1956稲尾 和久(西鉄)21勝6敗 防1.06
1961徳久 利明(近鉄)15勝24敗 防3.26
1962尾崎 行雄(東映)20勝9敗 防2.42
1965池永 正明(西鉄)20勝10敗 防2.27
1966堀内 恒夫(巨人)16勝2敗 防1.39
1999松坂 大輔(西武)16勝5敗 防2.60
2007田中 将大(楽天)11勝7敗 防3.82
【注】尾崎行雄は浪商高中退

★新人王記念グッズ、サイン入りで発売

 楽天は、田中の新人王記念グッズを発売する。完全受注販売で、受付期間は21日から12月2日まで。グッズは、サインボール、写真、キャップ、Tシャツ、マフラータオルの5種類ですべてサイン入り。詳しくは球団HP(http://www.rakuteneagles.jp/)で。