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   救急収容拒否/事態の検証と再発防止防げ(11月17日付)

 交通事故の被害や急病などで一刻を争う事態が起きても、救急車が到着すれば当事者も一安心だろう。あとは搬送先での治療に任せられる。なのに収容する病院が決まらなかったらどうか。救急車内で待ち続ける患者にとれば、不安が募る一方だろう。救急の現場であってはならないことが、福島市で現実に起きた。
 福島市仁井田の県道で79歳の女性が車にはねられたのは11日の夜。女性は4病院に計8回にわたり受け入れを断られ、約1時間後にようやく同市北沢又の病院に収容された。しかし、女性は事故から約6時間後に脳挫傷のため死亡した。
 福島市消防本部によると、女性は頭など全身を強く打っていた。早期に病院に収容され、適切な治療を受けていたなら助かったかもしれない。人命が失われた深刻な事態だ。関係機関などはどこに問題があったのか事実関係をきちんと検証し、再発防止の体制づくりを急がなければならない。
 経過をたどると、女性は最初に福島医大付属病院に断られた。さらに市内の3病院でも受け入れてもらえなかった。再度も含め同市消防本部からの電話による要請は計8回に及んだ。受け入れは「ベッドが満床」と、総合的に対処できない「処置困難」が理由で断られたという。
 福島市では救急指定10病院が休日、夜間に対処するため診療科ごとに輪番制を敷いている。今回の事故では、現場での女性の状態から三次医療機関の福島医大にまず収容を問い合わせ、二次医療機関である脳外科の当番病院に順次、要請された。
 救急車は市消防本部が要請する病院に向けて走り出し、断られると次の病院に向かうという状況だった。
 事態を重く受け止め、市医師会や市、救急指定病院などで構成する市救急医療病院群輪番制運営協議会のほか福島医大付属病院でも再発防止策を協議する方針という。日曜夜の救急受け入れ体制に不備はなかったのか。問題点の洗い出しが急務だ。
 県外も含めた福島市以外の救急受け入れなど、搬送体制の拡充も検討してもらいたい。同市消防本部の昨年の搬送は8599件。1日平均で24件の割合だ。昨年は搬送全体の94%が1回の要請で収容された。しかし、今回のような事態が再び起きないとは限らない。
 重篤な患者を24時間受け入れる「救命救急センター」は郡山、会津若松、いわき各市にある。今回のような事態では、まず救命救急センターに運ぶことが考えられよう。
 福島市には来年1月にようやく、福島医大付属病院に救命救急センターが開設される予定だ。ドクターヘリも併せて運用される計画。この救命救急センターが救急医療の核となり、今回のような悲劇が2度と起きないよう切に望みたい。

 
   
 

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