敷居も値段も飛び切り高い店が並ぶ「ミシェランガイド」東京版が話題を呼んでいる。三つ星を獲得したのは八店。ガソリンの値上がりに頭を痛める私たちには縁遠い「美食の店」である 覆面調査員には外国人が多いとか。日本料理の繊細さがどこまで分かるか、と高価な美味にやっかみも交じるが、「旅する価値のある卓越した料理」なら、北陸も負けてはいない 雪の夜に「影笛(かげぶえ)」の演出でお座敷で味わうズワイガニのもてなしは、三つ星ものだろう。ぜいたくなズワイだけではない。手ごろなコウバコを山ほど買い求め、仲間と卓を囲んで無礼講で食い散らす楽しみも、当地に旅すれば手軽に味わえる ミシェランの星が美食なら、当地には「じわもん」という別の星が幾つもある。海や野の恵みの限られた時期の飛び切りのうまさが味わえるのは、産地から遠い東京ではなく、この土地であろう ミシェランの星のリストを眺めていたら、「この店のおやじのひいきは、北陸のあの店」という話をいくつか教わった。フランス人や東京の「食通」が知らない「ごっつぉ」も根付く土地である。星は、さほどうらやましくはない。
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