08年度診療報酬改定の要点(2)

 厚生労働省は次期診療報酬改定の検討項目を10月から週2回のペースで審議し、当初予定していた検討項目の9割を審議した。後期高齢者医療の診療報酬についても大枠が固まってきたが、「主治医」をめぐる議論は錯綜している。(新井裕充)

※ 08年度診療報酬改定の要点(3)は、11月21日に配信する予定です。

【関連記事】
08年度診療報酬改定の要点(1)


 ※ 1.入院医療の評価、2.産科医療、小児医療、救急医療に関する評価、3.がん対策の推進、4.心の問題への対応については、関連記事「08年度診療報酬改定の要点(1)」をご覧ください。

5.後期高齢者医療の診療報酬
厚労省は、外来医療、入院医療、在宅医療、終末期医療――の4項目に分けて提案している。

 (1)外来医療
 「フリーアクセスを制限する」といった批判が相次いだ「主治医」について、現段階では人頭払い制の導入や登録制などは示していない。主治医について厚労省は、患者の病歴や薬歴などを総合的に把握し、継続的に診療を提供する役割などを提案。診療報酬上は、1カ月当たりの包括評価にする方向を提示した。

 また、これまで年齢にかかわらず同じに設定されてきた初診料(270点)の点数を後期高齢者については引き上げ、既往歴などを把握しやすくすることを提案。さらに、再診料(病院57点、診療所71点)を引き下げる代わりに「継続的な医学管理」を評価することで、長期治療の経過観察などの実施を促す方針も示した。

 厚労省は、この日の提案をもとに主治医の要件を具体化したい考えだが、一連の方向性に対して日本医師会が反発したため、結論は出なかった。
 保険局の原徳壽医療課長は将来的な構想として、「昔の外総診(老人慢性疾患外来総合診療料)みたいにしたい。主治医が複数になる場合は“早い者勝ち”になるが、そこはIT化で解決すべき」と話している。(11月2日・中医協基本問題小委

 (2)入院医療
 
退院後を見越した診療計画の策定や関係者の情報共有への評価を手厚くする。高齢者の「主治医」と受け入れ先の医療機関、薬局、訪問看護ステーションなどの連携を強化し、入院初期の段階から計画的な退院調整を進める。
 具体的には、「地域連携退院時共同指導料」には医師、看護師に加え、歯科医師、薬剤師が共同指導に参加した場合も評価する。また、共同指導のようなカンファレンス以外の取り組みによる情報共有を促すため、情報提供料の評価も見直す。(10月12日・中医協基本問題小委

 また、在宅療養している患者の病状が急変し、医師の求めに応じて入院させた場合を評価するほか、主治医などが中心となって在宅患者の情報を集約し、あらかじめ決めた後方支援病院に円滑に入院させたことなどを要件に診療報酬で評価する。
 具体的には、カンファレンスなどにかかる費用について診療報酬で評価するほか、「在宅患者応急入院診療加算」(650点)を引き上げる。(10月26日・中医協基本問題小委

 (3)在宅医療
 
在宅療養している高齢者を支える訪問看護師や訪問看護ステーションの役割を診療報酬で十分に評価する。
 また、在宅患者を訪問して服薬管理をする「訪問薬剤師」や、在宅患者の口内管理や健康に関する情報を主治医らに提供する「在宅歯科診療」も評価する。
 具体的には、月4回(がんの末期患者などの場合は週2回かつ月8回)に制限されている「在宅患者訪問薬剤管理指導料」の回数制限を見直すほか、「歯周疾患指導管理料」「歯科訪問診療料」「診療情報提供料」の点数を見直す。(10月26日・中医協基本問題小委

 (4)終末期医療
 
患者本人があらかじめ示した意思を「書面」にまとめ、本人の意思を確認できない場合には関係者が話し合って「書面」にまとめた場合に評価する。また、死期が迫っている患者の家族らに対する電話対応や訪問看護などを評価する。
 疼痛緩和ケアについては、麻薬の管理や服薬指導などの評価だけでなく、「療養上必要な指導」を評価する。評価の対象となる緩和ケアは「入院、外来、在宅」を問わない。(10月26日・中医協基本問題小委

 また、がん患者の痛みを緩和する「医療用麻薬」について、保険医療機関の医師が処方した場合には老健施設などで医療用麻薬を出来高算定できるようにする。(11月9日・中医協基本問題小委

6.後発医薬品促進のための環境整備
 
後発医薬品への変更を原則とするよう「処方せん様式」を改める。処方せん様式の変更に慎重な対応を求めていた日本医師会も賛成した。
 処方せんを受け取った薬局の薬剤師は患者の同意を得て後発医薬品に切り替えることができる。後発医薬品の一定以上の使用に対して調剤基本料に点数を上乗せする。 (11月9日・中医協基本問題小委

7.患者の視点の重視
 
患者から「明細書」の求めがあった場合、実費徴収を認めつつ発行を義務化する方向で検討する。厚労省は明細書の発行を段階的に義務化する方針で、既にレセプトオンライン請求を実施している400床以上の病院については、2008年4月からの義務化を目指す。今後、中医協で議論を詰める。(10月17日・中医協基本問題小委

8.訪問看護に関する評価の在り方
 
75歳以上の後期高齢者だけではなく、74歳以下の在宅患者についても訪問看護の役割を十分に評価する。
 具体的には、「24時間連絡体制加算(1カ月2,500円)」の点数を大きく引き上げる。また、「訪問看護基本療養費」と「訪問看護管理療養費」について見直す。(10月26日・中医協基本問題小委

 74歳以下の在宅患者への訪問看護を75歳以上と同等に評価する方針は11月9日の同委員会で提案し、了承された。
11月9日・中医協基本問題小委

9.検査・処置などの医療技術に関する評価

 (1)検査
 
胸部のX線撮影やCT・MRIなどの撮影画像を印刷せずにモニターを見て診断する「フィルムレス化」を進めるため、「フィルムレスによる画像診断」を診療報酬で評価し、従来の「デジタル映像化処理加算」を廃止する。
 また、画像診断医の過重な負担を軽減するため、「画像診断を専ら担当する常勤の医師」「文書による報告」といった要件を見直し、診断結果を正確に報告する体制などを評価する。
10月31日・中医協基本問題小委

 一方、検体検査について厚労省は、入院患者の病状の変化に合わせた速やかな検査を促進するため、「迅速に検査を行う体制」と「検査を24時間実施できる体制」を重点的に評価する。
 具体的には、「時間外緊急院内検査加算」(110点)、「外来迅検体検査加算」(各項目1点)の点数を引き上げる。受託業者が院内で検査を実施する「ブランチラボ」でも、医療機関が直接実施する場合と同様の体制であれば評価する。また、「微生物学的検査判断料」(150点)の点数を引き上げる。(11月16日・中医協基本問題小委

 (2)処置
湿布や点眼など医師でなくても行える処置の点数を外来の基本診療料(初再診料)に包括化する。包括化される処置は、「皮膚が赤くなる程度の熱傷で狭い範囲のもの」「狭い範囲の軟膏塗布」「点眼、洗眼、片眼帯」「湿布の貼付」――など。(10月31日・中医協基本問題小委

※ 08年度診療報酬改定の要点(3)は、11月21日に配信する予定です。


更新:2007/11/20   キャリアブレイン

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