月を周回中の衛星「かぐや」が、大小さまざまなクレーターの画像を地球に送ってきている。
きれいな写真に刺激を受け、名のもとになった竹取物語を再読した。やはり結婚する意思など毛頭ないのに、かぐや姫が願いごとをかなえてくれたらと五人の求婚者に難題を突き付ける場面が面白い。その中におや、と思う物があった。
「火鼠(ひねずみ)の皮衣(かわぎぬ)」だ。中国の想像上の動物で火山の山中にすみ、毛皮は火にいれても燃えないとされる。人に頼み大金を払ってやっと入手した安部の右大臣は勇んでかぐや姫のもとへ。そして、火の中へ。しかし、メラメラと燃えてしまった。
竹取物語は八七一年から八八一年の間に成立したとされる。耐火・不燃物へのあこがれはこんな昔からあり現代も変わらない。ニチアス(東京都)や東洋ゴム工業(大阪市)の耐火性能偽装は故意だけに安部の右大臣より数段悪質だ。
偽装手口も巧妙でニチアスは検査前に部材に水を染み込ませ、東洋ゴム工業は製品には使用しない物質を混ぜて燃えにくくして受けていた。世の中、偽装ばやりとはいえ人命にかかわることだけに看過できない。
本来は火で六十分あぶっても燃えないはずが四十―四十五分程度しか持たない物もあったという。かぐや姫にまた笑われないよう、メーカーは製品の回収・交換、再発防止に努めなければならない。