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自転車と列車に サイクルトレイン定着

2007年11月19日

 上毛電鉄(本社・前橋市)が03年度に始めた、自転車を電車に持ち込めるサービス「サイクルトレイン」が好評だ。電車の利用者全体の数は右肩下がりを続けるなか、06年度のサイクルトレインの利用者は1万6311人と、463人にすぎなかった初年度の約35倍に達した。07年度も毎月約2000人のペースを維持している。平日は通学の学生や買い物に行く主婦、週末には県内外の観光客の姿も目立つ。電車の新しい利用法として定着しつつある。

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自転車を持ち込み、電車の発車を待つ乗客=前橋市の中央前橋駅で

 午後4時過ぎ。中央前橋駅のホームに自転車を引く学生の姿が見えた。2両編成の電車に乗り込むと、座席の前に自転車を止めて席に座った。見慣れた風景になっているらしく、乗客は珍しがる様子もない。

 上毛電鉄は03年4月にサイクルトレインの試験運行を始めた。利用できる駅は、中央前橋や西桐生など4駅に限り、利用時間も、朝のラッシュ時間の過ぎた午前9時15分から午後2時46分までとした。

 04年度からは、時間帯や駅を徐々に拡大。05年度以降、時間帯は午前8時17分から終電の午後10時55分まで、利用駅23という現在の姿になった。

 03年度当初からサイクルトレインを利用している前橋市内の専門学校生(19)は「家から駅まで歩くと1時間以上かかる。バスも本数が少ないのでありがたいです」と話す。

 利用者の増加について、上毛電鉄総務部総務課の高橋由雄課長は「駅から目的地まで歩く必要がなく、バスやタクシーを使わなくてすむためお金の節約にもなる」と分析する。買い物に行く主婦や通学する学生、車を持たない高齢者が利用者の大半を占めるという。

 一方、同電鉄の悩みの種は、乗降人数の減少に歯止めがかからないことだ。00年度には400万人を超えていた年間乗降人数も、年々減り続け、サイクルトレインを始めた03年度に400万人を割り込むと、06年度は約350万人になった。

 高橋課長は「電車の利用者は、少子化や自動車の普及などで減っているが、サイクルトレインがなければ、落ち込みはもっと大きかったのではないか」とみる。

 半面、朝のラッシュ時に自転車を持ち込んだり、出入りの際に自転車が他の乗客にぶつかったりといったトラブルも。利用者のマナーの向上も、一層の普及に向けた課題のようだ。

 〈サイクルトレイン〉 自宅や出先などから乗ってきた自転車を電車内に持ち込み、目的地まで行けるサービス。目的地での行動範囲が広がり、健康と環境にもいいことから、電車の利用客の増加にも結びつくものと期待されている。県内では上毛電鉄の他に上信電鉄の全区間、全国では三重県の三岐鉄道や長野県の松本電鉄の一部区間などで利用されている。

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