08年度診療報酬改定の要点(1)

 2008年4月の診療報酬改定に向けた本格的な議論が中央社会保険医療協議会(中医協)基本問題小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)で進んでいる。厚生労働省は次期診療報酬改定の検討項目を10月から週2回のペースで審議し、既に検討項目の9割を消化。最終局面を迎えている次期診療報酬改定の要点を整理した。(新井裕充)

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 これまでの審議を振り返ると、厚労省は8月8日に次期診療報酬改定に向けた検討項目の柱を示した。
 その後、9月19日の中医協総会で19の検討項目を挙げ、これらを10月〜11月にかけて審議することになった。

 当初のスケジュールで10月に審議を予定していたのは、@入院医療の評価、A産科医療、小児医療、救急医療に関する評価、Bがん対策の推進、C心の問題への対応、D後期高齢者医療の診療報酬、E後発医薬品促進のための環境整備、F患者の視点の重視、G訪問看護に関する評価の在り方、H検査・処置などの医療技術に関する評価――の9項目。

 11月は、I勤務医の負担削減策、J初診料・再診料などの外来医療の評価、K地域における医療機関の機能分化と連携の推進、L有床診療所の評価、Mリハビリテーションの評価、N歯科診療報酬の見直し、O調剤報酬の見直し、P手術、麻酔、病理などの医療技術の評価、QDPCの在り方、R精神医療に関する評価――の10項目。

 以下、これまでの審議の要点を@〜Rの項目順に整理し、3回に分けてお伝えする。なお、実際の審議は当初の予定と前後している項目もある。

1.入院医療の評価

 (1)7対1入院基本料
 
7対1入院基本料への看護必要度の導入は継続審議となった。厚労省は看護必要度について再調査を実施し、急性期病院の一般病棟で実施されている治療(がんの化学療法や放射線治療)などを考慮した新しい基準(看護必要度)の導入を再提案する。(10月3日・中医協基本問題小委

 (2)入院時医学管理加算の見直し
 
厚労省は、十分な医師の人員配置、設備などを備えた病院を診療報酬で評価する方針を示したが、反対意見があり継続審議となった。 (11月2日・中医協基本問題小委)

 (3)特殊疾患療養病棟入院料
 
2008年3月末で廃止される一般病床と精神病床の「特殊疾患療養病棟入院料および管理料」の算定を継続することを提案した。同入院料の対象患者から「脳出血」や「脳梗塞」「認知症」などを除外し、本来の対象である神経難病などに限定する方向で検討する。脳出血や脳梗塞の患者は療養病床などへ移行を促す方針。
 また、既に廃止された療養病床での同入院料の算定について、手厚い看護配置の病棟に入院している患者に対する経過措置(2008年3月末まで)をさらに延長することを提案した。(11月7日・中医協基本問題小委

2.産科医療、小児医療、救急医療に関する評価

 (1)産科医療
 
低出生体重児や高齢出産に伴う危険性の高い分娩が増えているため、「ハイリスク分娩管理加算」の対象疾患を前置胎盤や心臓疾患等の合併妊娠などを加えることで合意。分娩のストレスに胎児が耐えられるかどうかを調べる「ノンストレステスト」(NST)などの検査の対象患者が「ハイリスク分娩管理加算」の算定対象と一致していないため、両者に整合性を持たせる方向も固まった。
 また、緊急の母体搬送の受け入れが円滑に行われるよう、診療報酬で評価する。委員から賛成意見が相次いだが、「診療報酬だけでは対応できない」との指摘もあった。(10月5日・中医協基本問題小委

 (2)小児医療
 
こども病院など地域で最先端の小児医療を提供する医療機関が赤字であることや、小児科医の不足などに対応するため厚労省は、診療報酬の施設基準以上の人員を配置し、特に手厚い体制が取られている小児の専門的な医療機関を手厚く評価する方針を提案したが、委員から異論が出たため継続審議となった。(10月3日・中医協基本問題小委

 (3)救急医療
 
急性期脳卒中に対応する体制を評価する方向でまとまった。厚労省によると、日本人の死因の第3位が脳卒中であり、その脳卒中の死因の約60%を脳梗塞が占めている。急性脳梗塞の患者は、病院に到着後1時間程度で血栓溶解剤アルテプラーゼ(t-PA)を投与する必要があるとされており、24時間画像診断や緊急手術、集中治療が行える高い病院機能の必要性を考慮した。

 このほか、医療安全対策として、臨床工学士の配置の評価、病棟薬剤師の重点化、集中治療室やハイケアユニットなどの充実を提案。病棟における薬剤師は、重篤な副作用が発現しやすい薬剤を使用する患者に重点化し、集中治療室、ハイケアユニットなども充実させる。「医療安全対策加算」の見直しについては意見がまとまらなかった。(10月19日・中医協基本問題小委)

3.がん対策の推進
 
放射線療法や化学療法の「外来シフト」を進める。医師、看護師、薬剤師の配置や質の高い外来化学療法を推進していくために必要な人材を配置している医療機関などの評価を引き上げる。このほか、リンパ浮腫については、術後適切な時期から患者への防止策の指導を評価することを提案した。(10月5日・中医協基本問題小委)

4.心の問題への対応
 
社会問題化している自殺に歯止めをかけるため、うつ病などが疑われる患者を内科医などが精神科に紹介した場合、診療報酬で評価する。また、自殺未遂などで救急医療を受ける患者へのカウンセリングについて診療報酬の在り方を話し合う方向も示した。
 紹介については、「専門医を紹介するのは主治医の役目であり、特別な評価が必要か」との意見もあり、継続審議となった。(10月19日・中医協基本問題小委

 また、心に問題のある子どもに対する外来の診療では親子をそれぞれ面接するケースも多く、診療が通常より長時間になることが多いため、診察時間に応じて診療報酬を引き上げる方針を示したが、「診療時間に時間がかかったから良い医療とは限らない」との意見もあり、継続審議となった。(10月19日・中医協基本問題小委

※ 続きは、08年度診療報酬改定の要点(2)をご覧ください。


更新:2007/11/20   キャリアブレイン

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