緊急地震速報で「２割追突」　運転実験、誇張して流布

　カーラジオから流れる緊急地震速報を、前を走る車だけが受けて減速すると、後続車の２割が追突事故を起こす−。こうしたショッキングな自動車運転実験のデータが放送関係者らに誇張して広まっている。追突の恐れは確かにあるが、実験した千葉大工学部の山崎文雄教授は「追突事故がかなり起きやすい状況下で実験した。通常の道路条件では２割も起きるとは考えにくい」と説明している。

　この実験は、画面を見ながら運転操作や地震の揺れを模擬体験できる装置を利用。時速８０キロで走る車２台に、揺れの前に速報を（１）双方とも流さない（２）双方とも流す（３）前方の車にだけ流す−とした場合、どんな運転行動を取るか各１０例ずつ調べた。その結果、実験（３）では、１０例中２例で追突事故が起きた。

　ただ、実験（３）は速報を流す時点で車間距離が短く設定されていた。実験（１）は７５−２０メートル、実験（２）は７０−１０メートル、実験（３）は３５−１０メートル弱という状況で速報を流した。特に実験（３）は２０メートル未満の例が目立った。

　山崎教授によると、実験（３）では日常的に首都高速などで見られるような「車間距離が短くて危険な状況」での影響を調べるため、特に距離を詰めるよう指導したという。

　だが、そうした前提条件を度外視して、一般的な事故発生のリスクであるかのように「２割で追突事故」と世間に広まっているのが現状だ。

　日本民間放送連盟（民放連）は今年２月、気象庁への意見書で「このデータは無視できない」と懸念を表明。特に緊急地震速報を流す立場の民放ラジオ局では、追突事故への懸念が今なお強い。

　山崎教授はその後、実験（３）と同じ条件で追加実験を４回行ったが、追突事故は発生せず、１４例中の２例にとどまった。