院内の緊急検査を重点評価、次期改定で

 入院患者が深夜に病変した際の検査など24時間体制の迅速な検査で早期に治療方針を決めることが求められる中、コストに見合った診療報酬上の評価がなされていないため、厚生労働省は11月16日の中医協診療報酬基本問題小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)で、24時間体制の院内検査などを2008年度の診療報酬改定で重点的に評価する方針を提案し、了承された。

 厚労省によると、検査の診療報酬は血液や尿、便などを採取する「実施料」と、採取した検体を調べる「判断料」に分けて評価している。
 このうち、実施料は実勢値に合わせて年々点数が切り下げられているが、判断料は逆に点数が高くなっている。

 検体検査の「実施」は、患者から採取した血液や尿、便などを調べる検査であるため「医療行為」とみなされ、医療機関内でしか行えない。

 一方、採取後の検体の「判断」は医療機関外での検査が可能であるため、多くの医療機関は検体の調査を外部の検査施設に委託して実施しているという。

 検体検査実施料と判断料について1988年から2004年までの推移を見ると、判断料はこの間で2倍以上に伸びているが、実施料は1988年の7割以下に落ち込んでおり、実際の費用に見合わない状況が続いている。



 このため、厚労省は入院患者の病状の変化に合わせた速やかな検査が実施できないことは問題があると判断。また、救急患者に検査をして異常値を示した場合、速やかに医師が判断する体制も不十分であるとの指摘を踏まえ、次期診療報酬改定では「迅速に検査を行う体制」と「検査を24時間実施できる体制」を重点的に評価する。

 具体的には、「時間外緊急院内検査加算」(110点)、「外来迅検体検査加算」(各項目1点)の点数を引き上げる。

 なお、受託業者が院内で検査を実施する「ブランチラボ」であっても、医療機関が直接実施する場合と同様の体制であれば評価する。

 一方、年々点数が高くなっている検体検査判断料のうち、細菌の種類を顕微鏡で判断する「細菌顕微鏡検査」や、試薬を多く使う「細菌薬剤感受性検査」などの微生物学的検査はコストがかかるため、中止した検査所もあるという。
 このため、厚労省は「よく使われる検査が赤字になるのは問題」と判断し、「実勢価を踏まえつつ再評価してはどうか」と提案した。

 具体的には、「微生物学的検査判断料」(150点)の点数を引き上げるが、微生物学的検査を除く検体検査判断料は引き下げることが考えられる。
 現在、検体検査判断料には「尿・糞便等検査判断料」(34点)、「血液学的検査判断料」(135点)、「生化学的検査(T)判断料」(155点)、「生化学的検査(U)判断料」(135点)、「免疫学的検査判断料」(144点)、「微生物学的検査判断料」(150点)がある。

 質疑で、対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)は「今後、判断料の実勢価が下がるようであれば(点数も)下げるべきではないか」と指摘したが、竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)は「価格が下がり受託する検査所が少なくなったために検査の精度が落ちるのは困る」と述べ、厚労省案に賛成した。

■ 病理学的検査診断・判断料
 
内視鏡で取った胃の潰瘍(かいよう)などを病理医が顕微鏡で診断する「病理」は、病名の判断やがんのステージを判断する上で重要であるにもかかわらず「検査」の一部になっているため、その位置付けに対する配慮を日本病理学会から求められている。

 このため厚労省は、診療報酬点数表上「第3部 検査」の一部になっている「第2節 病理学的検査料」を独立させて新しく「病理」の部を創設することを提案し、了承された。

 もっとも、病理に関する技術の評価は医療技術評価分科会と先進医療専門家会議などにおける検討を踏まえて別途対応する。


更新:2007/11/19   キャリアブレイン

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