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2007年11月20日

◎高卒学力テスト 必要性乏しく時代にも逆行

 政府の教育再生会議が提唱した「高卒学力テスト(仮称)」は、現実離れした机上のプ ランと言わざるを得ない。何より必要性に乏しく、「小さな政府」の流れにも逆行する。大学入試制度を改革するなら、大学入試センター試験を簡素化するなど、現行の制度を時代に合わせて変えていくことが肝要であり、大学入試センター試験に屋上屋を重ねるような制度は改革の名に値しない。

 再生会議が考えている高卒学力テストは、国公私立を問わず、大学進学志願者全員に受 験を義務付け、不合格なら、大学受験資格を与えないというものである。これまで大学入試センター試験とは無縁だった大学の受験生にまで広く網をかけ、「足切り」を行う強大な権限を、事実上国が握ることになりかねない。

 再生会議は実施のメリットとして、大学進学者の「質」が確保されると言うが、果たし て本当だろうか。大学入試センター試験を受けるレベルの受験生にとっては、意味のないハードルが加わり、無用の負担が増えるだけだ。学力レベルが今ひとつの受験生は、不合格になれば大学進学をあきらめて、専門学校に行くだけではないか。

 新たな関門を設けたからといって、すべての大学進学希望者が勉学に励むようになると は思えない。勉強が苦手でもスポーツや芸術などの分野で優れた素質を持っていたり、全体の成績は振るわずとも数学や外国語など特定の学科にめっぽう強い受験生などの入学機会を奪うことにもなる。再生会議は、こうしたケースについては救済措置を検討するようだが、大学入試の多様化に水を差し、大学の自主性を損なう懸念は消えない。

 安倍晋三前首相の肝入りで誕生した再生会議は、これまで学力向上への提言や道徳教育 の教科化などを提唱してきた。傾聴に値する意見もあるにせよ、どこか地に足が付いていない印象がある。特に今年五月の第二次報告では、大学入試センター試験を年複数回行う案が示されたが、そんなことをして喜ぶのは教育官僚ぐらいのものではないか。受験生はもとより、大学側も高校側も望まないはずだ。再生会議は大学入試への国の関与を極力減らす方向を目指すべきだろう。

◎「ゴディバ」小松へ 国際貨物拡大の追い風に

 小松空港の丁寧な貨物取り扱いが認められ、ベルギーの高級チョコレート「ゴディバ」 が日本への輸送ルートを成田空港から小松へ移す方向であることは、品質を最優先する貨物空港としての独自性が評価されたものと言えるだろう。消費地とのアクセスというハード面とともに、品質管理というソフト面での取り扱いも、国際航空貨物輸送の重要な要素となってきたことをうかがわせるが、デリケートな産品の物流拠点としての高い評価を、小松空港活性化の追い風にしたい。

 ゴディバは一九二六年にベルギーで誕生し、高級感のある創意に富んだ粒チョコを発売 して世界に販路を広げた。日本には一九七二年に初めて店舗がオープンし、船便と航空便を使って輸入されているが、そのうち航空便は、これまで、ほとんどが成田着だった。

 チョコレートは高温に弱いことから、航空機から冷蔵庫までスピーディーな移動が求め られるが、成田などの大空港と違い、小松の場合は移動時間が少なく、取り扱いも丁寧であることから、輸入元が成田からの移行を決めたようだ。

 小松空港へは、八月末の空輸試験を皮切りに空輸が本格化し現在まで約二十トンが入っ ている。今後さらに小松への輸入量を拡大させるためには、品質管理の徹底によって信頼を積み重ねていくことが求められ、これからが正念場と言えよう。

 原油価格の高止まりなど、国際航空貨物市場を取り巻く環境は、昨年から今年にかけて 急速に悪化してきたと言われる。小松空港では昨年十月、カーゴルクス航空(ルクセンブルク)が、それまでの週四便から週三便に減便した影響で貨物取扱量も減少し、たとえば今年八月の取扱量は、昨年八月と比較して四割以上も減ったという。

 県ではカーゴルクス便の週四便への復便を目指して交渉を進めているが、これまでも小 松空港にはカーゴ便で高級チーズやワインなど、温度管理が厳しく問われる産品が空輸されている実績があり、今回のゴディバ空輸の拠点化によって新たな需要を引き寄せ、復便に向けて、これまで以上に質の高い取り扱いをアピールしたい。


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