「記憶にない」が「記録にない」に変わった。防衛商社幹部との宴席同席をめぐる、額賀財務相の弁明である。昼夜を分かたず調べた、という仰々しいせりふまでついた 前防衛事務次官の同席証言とは、食い違う。どちらかがうそつき、と思いたいが、簡単に馬脚をあらわす政治家や高級官僚ではない。一方は、事実はともかく記録類は見つからないと言うのであり、他方は、記憶はあいまいだが、と前置きしての証言である 偽装表示を「指示された」「していない」という非難合戦よりは、手が込んでいる。腹芸にたけた、とでもいうのだろうか。「誠心誠意うそをつく」と自慢した政治家がいたというし、衆院の解散権行使は「うそをついても構わない」という不文律のある世界ともいう 「だまし討ち」「死んだふり」解散という物騒な言葉がまかり通るような国会議事堂とその周辺での「うそ合戦」である。どうにも私たちの目には分かりにくい 分かるのは、政治家不信が消えぬことと、優秀な官僚という神話の崩壊に拍車が掛かったこと。加えて、それでも「よその国よりはまし」とみる我慢強い国民が健在なことか。
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