年の瀬が近づいてきました。二〇〇七年を振り返るとき、頭に浮かぶのが「食」に関する不祥事の多発です。
北海道の食肉加工販売会社「ミートホープ」や秋田の食肉加工製造会社「比内鶏(ひないどり)」、大阪の高級料亭「船場吉兆」の偽装、三重の和菓子メーカー「赤福」の製造日や賞味期限の改ざん…。謝罪する後から出てくる新たな不正に、うんざりした人も多いのではないでしょうか。
気になるのは、こうした会社の多くが同族企業という点。地方では経済界を代表する名門企業であっても株式を公開せず、創業者一族が経営を世襲しているケースは珍しくありません。
以前取材した企業トップは「同族経営だからこそ、株主の顔色を気にせず十年先、二十年先をみた息の長い研究開発に取り組める」と話していました。大きな経営判断を速やかに下せ、目先の利益にとらわれず長期的な視点が持てるのはオーナー企業の利点と言えます。
しかし株主や投資家、金融機関といった外部のチェックが働きにくく、ともすれば独善的な経営に陥りがち。「消費者にはどうせ分からない」―。一連の問題でにじむ各社の姿勢は、食の安全・安心に対する社会関心の高まりに、あまりにも鈍感だったと言わざるを得ません。
もちろん上場せずとも社外取締役や外部監査機関の導入などを進めている企業は少なくありません。社会の流れを見誤らないためにも「外部の目」に経営をさらす必要性は一層増しているのではないでしょうか。
(経済部・桑原功)