政府は、今年が地方自治法施行六十周年に当たることから、各都道府県にちなんだデザインの記念貨幣を発行することを決めた。
来年から十年かけて順次実施する。記念貨幣といえば、東京五輪や瀬戸大橋開通など数多く発行されているが、地域ごとにデザインが変わるのは国内初の試みだ。どんな貨幣が登場してくるか興味深い。
今後、財務、総務両省をはじめとする懇談会を設け、貨幣の額面や発行枚数などを検討する。年明けにも第一号が決まりそうだ。地域の活性化が狙いというが、単に記念貨幣を発行するだけでは成果はおぼつかない。広く住民の参加を促して熱気を生む仕掛けが大切だ。
各地に誇りとする観光地や歴史的建造物、祭り、そしてゆかりの動植物などがある。全国に地域をアピールする上でふさわしい素材は何かを考えることが、あらためて地域に関心を向けることにもつながる。ユニークな図柄も期待できよう。
地方自治制度は戦後改革の柱の一つだ。いまや地方分権への大きな転機を迎えている。国による画一的な政策の押しつけでなく、権限や税財源を地方に移譲し、自治体や住民が主体的に考え、責任をもって取り組むことが地域活性化に欠かせない。
各地の魅力を刻む記念貨幣も分権に通じるものがある。地元の意見を十分に生かし、長く親しまれる「おらが貨幣」にしたい。