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【主張】財政審建議 与野党とも規律緩めるな
来年度予算編成についての財政制度等審議会の建議(意見書)が、財政規律と市場の信認の揺らぎに強い懸念を表明した。「ねじれ国会」下で与野党から歳出圧力が高まっているためで、財政再建が大きく後退するとの危機感を示したものといえる。
とりわけ建議が問題視しているのは、地方対策と医療費だ。ともに参院選以降、改革で格差が拡大したとの声を背景に、与野党が競うように歳出圧力を高めている分野である。
建議は地方財政について全体では大きく改善し、逆に地方支援で国の財政が急速に悪化したとの認識を示した。そのうえで、地方間格差是正は地方交付税ではなく、地方法人2税(住民税と事業税)で行うべきだとした。
いわゆる自治体間による水平的財政調整である。東京などの大都市と地方の格差が主にこの2税の税収に起因していることを考えれば当然だろう。それは国に依存するより、地方の自立、分権にもつながるはずだ。
医療費については、高齢化社会の進展で増大する社会保障費の中でも最も高い伸びが見込まれるため、その抑制を強く求めている。とくに、医療費抑制が医療格差を生んでいるとの見方に対し、公費負担は他の先進国に比べ低くないとの指摘は注目に値する。
日本医師会などが大幅引き上げを求めている診療報酬についても、引き下げを提言した。指摘される医師不足などは医局制度や診療報酬体系にも問題があるためとし、開業医優遇の是正を求めたのは妥当だろう。
建議がこうした危機感を表明したのは、歳出・歳入一体改革が揺らいでいることの裏返しでもある。道路特定財源の一般財源化が有名無実化しそうなだけでなく、再来年度の基礎年金国庫負担割合引き上げの安定的財源確保でもメドがついていない。
これでは2011年度の基礎的財政収支黒字化の目標達成さえ危うい。建議が国債費を含めた財政収支の均衡や、2050年までの長期財政推計を示したのは、このためだろう。
長期推計は債務残高GDP(国内総生産)比を欧州連合並みに引き下げるには、消費税換算で11%の改善が必要とした。福田康夫政権と最大野党の民主党はこれをどう受け止めるのか。