内野聖陽さん、市川亀治郎さん、ガクトさん、そしてスタッフが綴る「風林火山」日記 大河三昧
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4月29日 長尾景虎役 Gackt(ガクト)

体重9キロ増でクランクイン

 数日前から「風林火山」の収録が始まり、『景虎の名に恥じぬよう頑張らなくては』という思いでスタジオ入りをした。だが、僕はそれほど器用ではないので、撮影の合間にスイッチをオンにしたり、オフったりというのは苦手。そのため、すでに2か月ほど前から普段のGacktとしてではなく “上杉謙信”であり“長尾景虎”として日常生活を送るようにしてきた。

 体型を一回りサイズを上げたのもその一つ。元々普段からトレーニングはやっているが、2か月前からはトレーニングの内容を増やし、見た目も中身も鎧(よろい)を着けて戦国の世で戦えるだけの体に仕上げるため、毎朝3時間のハードトレーニングで9キロ増を実現。こうした肉体的なことだけでなく、精神面、生活習慣まで、とにかく謙信の精神的領域に近づくために、かなりストイックな生活を送っている。    
 『僕にしかできない上杉謙信ってなんだろう』っていろいろ考えて、謙信の中性的な部分や謎めいた部分を含めて、独創的な考え方と圧倒的なカリスマ性を発揮して家臣や重臣たちを引っ張っていく。そんな唯一の存在であり、武田信玄(晴信)との対比を映像に出していくことだと考えている。
 今はまだ始まったばかりで収録もそこまでハードではないけれど、もう少し撮影のスケジュールが詰まってくると、もっともっと普段の僕が “謙信”に近づいて いくんだろうなと感じている。とにかく、多くの人たちに期待してもらっているので『予想を裏切り、期待には応える』という気持ちだ。

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4月22日 武田晴信役 市川亀治郎

NHK内の書店は要チェック!

 こんにちは、亀治郎です。歌舞伎のパリ公演も終わり、また1週間の半分は「風林火山」の収録でNHKに通う日々が戻ってきました。
 そんな中で僕が楽しみにしているのがNHK内にある書店をのぞくことです。収録のある日、まず向かうのがスタジオとは逆方向にある書店。もともと書店で本を探しながら過ごすことが好きなうえに、ここは新刊本が店頭に並ぶのが早いので必ずチェックすることにしているんです。
 ジャンルは内外を問わずノンフィクションが好きで、この間も『周恩来秘録』上下巻を買いました。残り1部ずつしか残っていなかったので、さすがに話題の本だけあるなと思ったら、やはりその後ベストセラー入りしましたね。
 書店に行く時間がない時や、どうしても手に入らない古本はインターネットで買うこともあります。ただ僕のインターネットに対するスタンスは『なるべく見ない!』(笑)。調べ物をしたり、自分のホームページを見る時ぐらいです。インターネットは便利だけれど情報が多すぎる。必要以上の情報を自分の中に入れないようにすることも大事です。

 収録の合間は、スタジオの前室で共演者の高橋一生くんや柴本幸さんと話をしながら過ごすことも多いですね。高橋くんが演じる駒井政武は晴信の側近なので一緒にいる時間が長く、今やすっかり意気投合しています。
 由布姫役の柴本さんは、この作品が女優デビューですが、僕も映像デビューなので同じようなもの。慶応大学の後輩でもあり何かと気になります。僕は女形も演じるので、所作などは『こうしたほうがきれいに見える』とアドバイスすることもあります。
 彼女と大学のことを話していて驚いたことが一つ。僕の学生時代、創立当時はあったのに、いつの間にか消えてしまった“三田の幻の門”と呼ばれる場所があったんです。ところが、彼女の話によれば今ではそこに立派な門が建っているとか。幻が幻でなくなっていたことが判明したというわけです。

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4月15日 山本勘助役 内野聖陽

スタジオの隅でリフレッシュ

 取材の時によく聞かれるのが『収録の合間は何をしているんですか?』という質問。これはその時、撮っているシーンによってまったく違ってきます。
 セリフの量が多かったり、深刻なシーンの場合、集中力を途切れさせたくないので、あまり誰かとしゃべったりすることはないですね。勘助が命を賭して由布姫を説得するなど、極限状態にまで自分を追い込まないと出来ないようなシーンを撮っている時は、ものすごく無口になっています。日常のテンションのまま入り込めるような世界ではありませんからね。相当いろんなものを遮断することで、その瞬間のシチュエーションにグワーッと入り込んでいくという感じです。

 ただ、極度の集中を必要とするシーンを、スタジオという密閉された空間で撮っていると、酸素不足のような感覚になることがあります。テスト、カメラリハーサルと本番までに何度も同じことを繰り返すから、だんだん感覚が麻痺(まひ)して新鮮な演技ができなくなってしまう。『ああ、屋外へ出て酸素をいっぱい吸わなくっちゃ』って感じになります。
 現実にはそうもいかないので、セットや照明の手直しをするちょっとした待ち時間に、スタジオの隅で深呼吸をしてみたり、軽いストレッチをしてリフレッシュさせるようにしています。
 一方、コミカルでテンポの良いシーンの場合、待ち時間に手の空いたスタッフと雑談している方が入りやすかったりします。軽やかさが必要になったり、柔軟な感覚でいないといけない場合もありますから。
 僕が待機している様子を見ればどんなシーンを撮っているか、わかるかも知れませんね(笑)。

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4月8日 演出 清水一彦エグゼクティブ・ディレクター

始まりは現地の空気にふれることから・・・

 大河ドラマの演出を担当するのは3年前の「新選組!」以来です。「風林火山」は昨年の8月にクランクインしたのですが、当然、僕らスタッフはそれよりはるか以前から準備に入っていました。その中で僕が大切にしてきたのは、まず舞台となる土地を訪れること。
 大河は史実をもとにしたドラマなので、必ず歴史上の人物ゆかりの地があります。たとえ当時の面影はなくとも、やはり現地の人々にふれたり、そこの空気を吸収することが僕にとっての大河の始まりであり、一つの儀式のようなものになっています。
 今回でいえば山本勘助の本拠地である甲斐、そして信濃、また勘助の故郷と言われている静岡や三河はもちろんのこと、敵方・上杉謙信の本拠・越後などにも、ロケハンを兼ねて出かけました。脚本を担当する大森寿美男さんも時間が許す限り一緒に回り、お互いに『ああでもない、こうでもない』と語り合いながら、イメージをふくらませていったのです。そんなふうに、さまざまな土地を訪れ空気を吸収する作業を通して、少しずつドラマの血肉となるものを体の中に蓄えていきました。

 収録に備えて演出が最初にやることは“カット割り”といって脚本に線を引く作業です。これはシーンごとの構図や順番を決めるためのもので、パッと出来る時もあれば、なかなか決まらないこともある。それでも頭の中に映像を思い浮かべながらの作業は苦しいけれど楽しい時間です。
 打ち合わせ、リハーサル、収録、編集、音入れなど、さまざまなプロセスを経て完成する1話45分間のドラマ。最後の仕上げは日曜日の夜、家族と一緒に放送を見ること。家族も視聴者の1人なのでどういう評価をするのか、意見を聞いて参考にします。ただし、ドラマの内容などを説明してしまうとうるさがられるので、それだけはしないように気をつけています。

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4月1日 武田晴信役 市川亀治郎

部屋から部屋へ移動しながら完成形に

 「風林火山」は、僕にとって初めての映像の仕事になりました。だからといって取り組む姿勢や演じ方が舞台と大きく変わるかといえば、そんなことはありません。ただ、たしかに歌舞伎の世界とは違うなと感じることもありますね。だいぶ収録も進み、すっかり慣れたこととはいえ、『あ、こんなことが』と僕が気づいたことを挙げてみましょう。

 収録がある日は、スタジオの入り時間というのが決められています。本番までにメイク、着付けなどをする時間もそこには含まれています。歌舞伎の場合、メイクは役者が自分でやりますから、時間がなければ10分で仕上げようといった具合に、入り時間を自分で調整できてしまいます。でも、テレビはメイクさんにお願いするので、その時間に合わせて入ることになります。
 また歌舞伎では、メイクや着付け、かつらといった支度はすべて楽屋にスタッフが来て行います。ところがテレビではメイク室、着付け室、かつら室と一つ支度を終えるごとに部屋を移動していかなくてはいけない。これには、ちょっとびっくりしました。
 それに役者さんの楽屋の戸がいつも閉まっていることも意外でした。歌舞伎では、よほど具合でも悪くない限り、楽屋の戸はいつでも開いています。もし閉まっていたら『ああ、あの人、体調が悪いんだな』と思うくらい。戸を閉めるという習慣を知らなかったので、最初はちょっと冷たい印象を受けてしまいました。僕は、ここでも楽屋の戸は開けっ放し。中で支度をするわけではないので、ほとんど本を読んで過ごしています。
 次回は、楽屋以外での過ごし方や共演者とのエピソードなどにもふれようと思います。どうぞ、お楽しみに。

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