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究極はCRMツールとなれるか? 電子マネー戦争の未来
電子マネーは現在、普及という第1フェーズのさなかにありながら、地理的な勢力争いを繰り広げる第2フェーズが見え隠れしてきた段階にある。だが、戦国マップの様相も実は「戦いの仮の姿」かもしれない――。
第2フェーズは仮の姿 その裏に潜む戦いとは? 全土支配の準備をいち早く整えたビットワレットの「Edy」やジェーシービー(JCB)の「QUICPay」、東日本から鉄道網の連携で全国展開を目指す東日本旅客鉄道の「Suica」、主婦層を当初の顧客ターゲットに据え、流通網を軸に首都圏から全国制覇を狙うセブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」とイオンの「WAON」、「Suica」との相互利用で全国拡大も夢じゃないPASMO協議会/パスモの「PASMO」――勢いづく各電子マネーが普及という第1フェーズにおいて、戦国マップを塗りたくるように地理的な勢力分布を拡大するという、次のフェーズもすでに見え始めている。 そんな第2フェーズも、それほど寿命は長くはないのかもしれない。つまり、その戦国マップで見る勢力分布の構図も、電子マネー本来の戦いの様相を反映していないかもしれないのである。 その理由の1つに、野村総合研究所(NRI)が電子マネーの敵をクレジットカードと見ていることがある。
「これから情報・通信市場で何が起こるのか」(著:野村総合研究所 情報・通信コンサルティング一・二部、発行:東洋経済新報社)P50図表1.3-2「決済単価と利用される決済手段」を基に作成 NRI金融コンサルティング部の副主任、上田恵陶奈氏は「決済単価が高い領域はクレジットカード、低い領域は、もともと現金だったがそれが電子マネーになった。この双方が、『上下の両方からせめぎ合って』いる状態。従って、電子マネーにとって大事なのは(単価の低い領域内で)陣営を取り合うことではなく、(クレジットカードの領域に向けた)境界線をいかに上げていくかということになる」という見解を示す。そして、「QUICPay」のようにクレジットカード側から電子マネーに入ってきた存在があるという現状も踏まえ、「電子マネー業者はクレジットカードに対抗することが大事」と指摘する。 同じ金融コンサルティング部で上級コンサルタントを務める安岡寛道氏によると、「現金社会」である日本の文化の中では、クレジットカードはどうしても決済単価の高い部分で利用が集中する。一方、電子マネーは子どもでも使えるため、決済単価が低くなりがちだ。従って「そこ(決済単価による支払い方法)はすみ分けされてくる」という。そのため、「単純に経済領域で判断し、(クレジットカードと一体となった)『QUICPay』が使われやすくなるとするのは早計だ」という。 こうした見方を否定する向きもある。「『QUICPay』などの電子マネーがクレジットカードに代わることにはならない」(JCB市場開発本部QUICPay統括室専任マネージャーの吉田敦史氏)というものだ。果たして、電子マネーの侵食領域はどこに向かうのだろうか。 本来の目的は? 究極の戦いはどこに? 究極的にはいずれ、各電子マネーの間で相互利用されるようになるのは間違いないだろう。どの規格でもどこでも使える、という姿である。例えていうなら、クレジットカード。初期のころはカード会社によってスキャニングする端末が異なったが、今ではそんなシーンを見ることはない。そのため、今のこの第1フェーズの状況を、クレジットカードが出始めたころと照らし合わせる見方をする人もいる。 いずれにせよ、その相互利用の時代は第3フェーズとなるだろう。100%そうなるとは限らなくても、それが普通になるときはそれほど遠い未来ではないかもしれない。 第3フェーズでは、電子マネーは小額決済のインフラとなっている可能性が高い。そのとき、どの電子マネーが勝っているかとか、広く使われているかとかは、恐らく意味のないことになる、と安岡氏や上田氏は指摘する。いかに、それを使っている消費者の商習慣を把握できるか。つまり、電子マネーによって得られたデータをいかにマーケティングに生かすことができるかが焦点になる。電子マネー戦争の行き着く先は、それをCRMツールとして活用できるかどうか、ということになるというのだ。 いずれにせよ、今は「業界全体で電子マネーの市場をつくり上げていく段階」(安岡氏)。5月に発行枚数3000万枚に達した「Edy」、4月に同2000万枚を突破した「Suica」などによって、「かざして支払いをする」という商習慣はかなり浸透した。だが、まだ首都圏などに限られている感は否めない。新しい規格の電子マネーの登場で「(普及の)ハードルになっている非接触で決済することに対する心理的なバリアーが低くなることに期待している」(ビットワレット事業戦略部事業企画課の大上裕介氏)段階なのである。さもないと「デビットカードの二の舞になる」(上田氏)可能性すらある。 だが、そうした浸透は、圧倒的にプリペイド式の電子マネーによって進んでいる。そういう意味では、「QUICPay」など、いまだ全体で数百万枚といわれるポストペイ式のものは、そのモデルを早く利用者のライフスタイルに根付かせる必要があるかもしれない。 今後考えられる電子マネーの進む道には、相互利用(共有化)、上限額の引き上げ――といったことが挙げられている。ただ、共有化されたからといって各電子マネー間の競争がなくなるわけではない、と安岡氏は指摘する。また上田氏は、上限額の引き上げは、制度面などさまざまな検討課題が残っているものの、クレジットカードを一層、競争相手としてとらえていくことになるという。 戦国マップは現時点におけるスナップショットで終わる可能性があるが、電子マネーが直面する戦いは果てしなく続きそうでもある。 取材・文=アイティセレクト編集部 ※ 本稿の内容は、一部を除き、基本的に4月17日現在となる。 関連記事 流通業界から現れた「新参者」の勢い “流通系”を迎え撃つ 電子マネーの先行者 元祖電子マネーが標ぼうする“全土支配”の本気度 「本業の裏」にある 電子マネーの本当の姿 戦国マップを“塗りたくる” 電子マネーの勢力圏争い 究極はCRMツールとなれるか? 電子マネー戦争の未来 コメントコメントを投稿するトラックバック
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