戸籍の電子化で、電子化以前の除籍者の名前が新戸籍では消されるが、制度移行の一定期間に除籍となったケースでは、新戸籍に名前が残る場合がある。「名前を残すことは困難」とする法務省も、移行期のトラブル防止のため記載を承認している。新戸籍でも「亡くなった子供の名前を残して」と訴えている親たちは「移行期で残るなら、すべて記載してほしい」と法務省の対応に不満を募らせている。
従来の紙の戸籍や電子化後も残る原戸籍では、死亡などで除籍となった場合、該当者の名前の欄に×印を付けるが、名前は読める。しかし、電子化の際には、戸籍法施行規則で、除籍者の記載を省略できると規定している。94年12月から全国で順次導入されている電子化戸籍では、電子化前の除籍者は名前さえ残らないため、病死した子供の親たちが「生きた証し。名前を残してほしい」と求めている。
電子化への移行期の除籍者記載については、法務省が「電子化に着手した後に除籍されるケースについてはそのまま移記して差し支えない」と電子化導入時の通達で示している。
東京都豊島区では、94年1月ごろから電子化作業を始めた。95年3月の電子化導入までに、死亡するなどして除籍となった人については、紙戸籍と電子戸籍の両方に記載した。豊島区に本籍のある東京都内の男性(73)の妻は電子化前の94年11月に亡くなったが、電子化戸籍にも、名前とともに死亡による除籍を示す記載がある。男性は「30年連れ添った妻の名が消されず良かった」と話している。
子供の名前を残すよう法務省に要望している川崎市の東城直枝さん(42)は「戸籍法の規則は名前を残すことを禁じているわけではない。面倒な作業を避けようとする行政の姿勢がうかがえる。原戸籍の情報はそのまま電子化戸籍に移すべきだ」と訴えている。
法務省は「電子化の入力作業には手間がかかる。電子化して名前を残すことは技術上は可能かもしれないが、電子化戸籍は既に7割の自治体で実施しており、戸籍の統一という面から難しい」としている。【工藤哲】
毎日新聞 2007年11月20日 2時30分